そして構造は現場に降りてくる
今回の国の通知は、こうした構造を見直しチェック体制を整えよという趣旨であり、一定の評価はできる。だが、これが自治体や学校に降りてきたとき、現場の負担が増えることは確実であり、果たして実効性を発揮できるかは極めて不透明である。
顧問任せだったバス手配を学校組織として管理することは一定の効果が期待できる。しかし、部活動の数だけある遠征のすべてについて事前計画の書面承認やバスや運転手の手配や資質の確認、当日の各種確認を重ねれば、事務作業は膨大になる。既に筆者の知る自治体では詳細なチェックシートの提出を求める動きが出ているが、ともすれば形骸化・有名無実化が危惧される。
緑ナンバー(事業者)であれば基本的にはプロが組織的に一元管理することになる。白ナンバーの学校輸送では、その職務が細かく分解され、顧問と管理職の確認事項として配られる。あたかも学校が旅客運送事業を行うかのような体制を素人の現場に強いることになる。
選択肢を塞いだまま、費用は語られない
さらに言えば、多くの自治体では以前から「旅客運送無許可バス(運転手付きレンタカー)の利用禁止」と同時に、「教職員の自家用車等への生徒同乗禁止」を通知している。選択肢が塞がれれば、学校は費用が高価な緑ナンバー(貸切バス)を使わざるを得ない。
だが、費用負担の議論は棚上げされたままだ。お金は生徒の命に代えられない。ならば、部活動の移動について補助金を国や自治体が出すなどの方策の方が、効果が期待できるのではないか。
国自身、教育課程内の活動では原則として公共交通機関、貸切バス等またはスクールバスを利用することが基本だとしている。実際に遠足などの教育課程内の生徒の移動は、緑ナンバーバスを使用しているのである。
学校教育の一環に位置付けられる部活動だけを別に扱う理由はない。あるいは、大会や練習試合などを大幅に制限していくしかない。
さらに懸念されるのは、その先である。強固な行政プラットフォームをもつ学校現場ですら悲鳴を上げる対策を、今後進行する「部活動の地域展開」の中で、地域クラブや民間団体が守り切れるだろうか。そのチェックを誰がどう行うのか。
生徒を乗せて走る車は、これから学校の外へ出ていく。今問われているのは、現場へ確認書類を増やすことではなく、「子どもの移動の安全責任を誰がどう担うのか」という制度そのものの構造設計ではないだろうか。
