2026年8月30日(日)

トランプ2.0

2026年8月30日

なぜこのタイミングでICCに制裁をかけたのか?

 トランプのICCに対する制裁のタイミングについても、述べてみよう。仮に11月3日の米中間選挙の前に、トランプにICCが逮捕状を出した場合、選挙結果に多大な影響を与えることは明白である。それは、「オクトーバー・サプライズ(10月の驚くべき出来事)」になり得る。

 エコノミストとユーガブの全国共同世論調査(2026年8月14~17日実施)によれば、トランプの支持率は、「支持する」が35%、「支持しない」が61 %である。この支持率では、前で紹介したネタニヤフに対する逮捕状に関する米国民を対象とした全国共同世論調査と同様、トランプに関してもICCの判断を「支持する」が「支持しない」を上回ることが予想される。ただ、トランプ支持者からICCは「政治的だ」「民主党寄りだ」「不公平だ」といった非難の声が上がるだろう。

 また、今回のICCに対する制裁は、ICCがネタニヤフに出した逮捕状に対する報復であると共に、米中間選挙を意識したものであるとも解釈できる。民主党予備選挙で、民主社会主義や進歩派の候補が、国内最大の親イスラエル系ロビー団体AIPAC(エイパック:米・イスラエル公共問題委員会)を非難しているからだ。中西部ミシガン州で行われた連邦上院議員候補を決める民主党予備選挙では、AIPACを厳しく批判したアブドゥル・エルサイード氏が、AIPACから巨額の献金を受けたヘイリー・スティーブン氏を破った。

 このような状況の中で、トランプにはネタニヤフを擁護することで、イスラエル寄りの姿勢を鮮明にして、米中間選挙に向けてAIPACやキリスト教福音派からの政治献金を集める狙いもあるとみえる。

「ルビオ、お前もか」

 トランプ政権には、ICC解体論を主張する閣僚がいる。マルコ・ルビオ国務長官兼大統領補佐官(国家安全保障問題担当)である。ルビオは8月18日の声明の中で、ICCが「腐敗し、悪意を持って権限を乱用している」と発表した。しかし、彼は具体的な不正蓄財や汚職などの客観的な証拠を示していない。ルビオは閣僚にいる間に、トランプ色に染まってしまったのだろうか。

 ルビオは、これに先立って7月13日のビデオメッセージで、ICC加盟国に脱退を促す働きかけを行った。トランプ政権の「操り人形」とみられるベネズエラ政権は、ICCからの脱退を表明した。ルビオも、仮にICCに「戦争犯罪」で起訴された場合、2028年米大統領選挙立候補に向けて大きなダメージを受けることは避けられない。それは、ライバルのJ.D.バンス副大統領に有利に働く。

 つまり、今回のトランプ政権によるICCに対する制裁のタイミングには、政治的思惑が強い。

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