かつて、社会人野球からのドラフト1位指名が確実視されていた田沢純一投手が、日本の球団からの指名を拒否してレッドソックスと契約した時、日本球界は、海外(米国)球団を退団して帰国後も高校出身者は3年間、大学・社会人出身者は2年間、ドラフト指名の対象から外すことを申し合わせた。しかし、この対抗措置は、公正取引委員会から独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いでの調査が入ったことで20年に撤廃へと追い込まれた。すでに“北風”的な防御策は使えなくっている。
ポスティングが流出に拍車をかけた
では、日本球界が、アマチュア選手が直接的にメジャーへ目を向ける動きを招いた要因はなかったか。決して、そうとはいえない向きがある。
メジャー挑戦を加速させた要因の一つに、ポスティングシステムがある。
近年、メジャーへ移籍する選手の多くは、球団が容認するポスティングシステムによって海を渡っている。このオフも、今季の打撃三冠王(本塁打、打率、打点)を獲得した阪神の佐藤輝明選手のポスティングによるメジャー移籍を球団が容認した。
海外FA権取得の9年よりも早くメジャー挑戦を認めることで、日本の球団には、メジャー球団から譲渡金が入る仕組みとなっている。
2024年にオリックスからドジャースへ移籍した山本由伸投手の場合、オリックスには5062万5000ドル(約70億9000万円)という大金がもたらされた。
金額設定の仕組みが変わったとはいえ、01年に日本選手のポスティングシステム第1号となった当時オリックスに所属していたイチロー氏の譲渡金(落札額)は1312万5000ドル(約14億4400万円)だった。
日本選手がメジャーで活躍したことよる実績が加味されたこともあり、四半世紀の間にトップ選手の相場が大きく跳ね上がったことを意味する。
球団が選手の意向を尊重し、ファンも選手のメジャー挑戦を後押しする風潮があるものの、譲渡金が「移籍金ビジネス」の側面を持つことは否めない。譲渡金を得られる日本の球団と、なるべく早くにメジャーへ移籍したい選手側のバランスが取れたことで、移籍時の年齢が若くても容認しやすい状況にあるのは事実だろう。
しかし、日本の球団によるメジャー移籍容認までの時期が早まることで、スター選手の活躍はメジャーでしか見られなくなってきた。譲渡金の引き換えに海を超えたトップ選手の活躍が日本のスポーツニュースを通じて大々的に伝わり、日本シリーズは、日本選手が出場するワールドシリーズと日程が重なる。次世代の選手らにとって、メジャーの存在を身近にしてしまって点は否めない。
