天然ガスについては、カタールがフランスに対し、冬季に月間2テラワット時(TWh、LNG換算で約14万トン)相当のLNGを供給することを約束した。これはフランスの月間天然ガス消費量の約7%に相当し、冬季のガス需給の安定化に寄与することが期待される。
一方、UAE、バーレーン、カタールからの追加供給は、ホルムズ海峡の安全な通航が前提となる。また、サウジ西部の紅海沿岸でも、9月16日と24日にイエメンのフーシ派がヤンブーのサウジアラムコ石油関連施設を攻撃するなど、安全保障上のリスクが高まっている。
今回の湾岸歴訪を通じて確保した追加供給は、短期的なエネルギー供給の安定確保につながると期待される。一方、実際の供給は中東情勢や海上輸送の安全性に左右されるため、不確実性が残る。フランスにとっては、エネルギー調達先や輸送ルートの多角化を進め、安定供給の確保が引き続き重要な課題となる。
UAEと戦略的防衛パートナーシップ強化と防衛産業協力
マクロン大統領のUAE訪問では、両国が戦略的防衛パートナーシップを強化し、戦闘機に関する政府間協定を締結した。マクロン大統領は10月21日の記者会見で、ラファール戦闘機の次世代型に関する共通戦略の構築で合意したと発表した。
フランスは防衛協力を基盤に、装備品の輸出拡大と産業協力の強化を図っている。その背景には、次世代戦闘機の開発を巡る環境変化がある。
フランスはドイツ、スペインと第6世代戦闘機の共同開発計画(SCAF)を進めたが、仏ダッソーと欧州エアバスの開発主導権や技術管理を巡る対立が解消されず、26年6月に仏独は共同戦闘機の開発を断念する方針で一致した。フランスは独自開発を視野に入れ、開発資金の確保と防衛産業基盤の維持が課題となっている。
UAEはフランス製兵器の主要購入国であり、21年12月にはラファールF4戦闘機80機を含む約160億ユーロ規模の大型契約を締結した。フランスはその後、ラファールの次期改良型「F5」の開発費用についてUAEに一部負担を求めたが、先端技術へのアクセスを巡る意見の相違から25年に交渉が事実上決裂したと報じられた。今回の政府間合意は、フランスにとってラファールF5の開発に伴う資金負担の軽減や、防衛産業の技術基盤の維持・強化につながる可能性がある。
