原田:少し前に『ダンダリン』という労働基準監督署の監督官のドラマがありました。段田凛という女性監督官だけ規則通り真面目に仕事をするんですね。逆に言えば、みんながお目こぼし行政をやっているからドラマになる。
非現実的な規制があって、それを現場の人が適当にごまかしながらやって、なんとか世の中が動く。日本の行政はそういう仕組みになっています。
冨山:今こそ、スマートな規制に変えるチャンスです。労働市場で賃金が上がり始めているから、中小企業を保護するミルク補給をやめて倒産しても、人手不足だから労働者は失業しない。
Andrew Bret Wallis / GETTY IMAGES
原田:人手不足になっていないと、合理的な政策は実行できません。失業者がいっぱいいるときに、中小企業の保護政策をやめることは政治的にできない。しかし安倍首相が大胆な金融緩和をしたから、人手不足になった。政策転換のチャンスでしょうね。
冨山:生産労働人口が減るのだから、潜在成長力はそれにつれ下がっていく。どう対応するかが最大の課題です。
そのためには一人あたりの生産性をいかに上げていくかというのが最重要。全体のGDPは減っても、一人あたりの生産性が上がることで、所得が増え、完全雇用の状態が達成される。そうすれば幸福感がある。好況不況というGDPに結びついた概念では捉えられなくなっていくと思います。
一人あたりの生産性をどう上げていくかというのが、アベノミクスの勝負どころだと思いますね。
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