2024年4月18日(木)

田部康喜のTV読本

2015年3月19日

 南海トラフ地震では、地震発生から30分後に3~5mの津波が襲うと推定されている。避難のために指定されているビルは27棟。住民全員を避難させるのは難しい。

 岡村さんらは、1000種の情報を重ね合わせた地図をまず製作した。さらに、全国の10階以上の建物の情報の分析をしたうえで、下知地区の建物を改めて検証した。

 その結果は、最大5mの津波が地区を襲った場合でも、計60棟に避難すれば助かることがわかった。

 こうした新しい防災地図に基づいて、地区の住民が短時間に避難する戦略的な計画を立案しようとしている。

社会の制度までも変える力をもつ

 また、長い間にわたって地区が水没する可能性を踏まえて、住民が「疎開」する計画づくりも進んでいる。戦時中の米軍による空襲を逃れようとした疎開が、災間社会で蘇る。

 疎開先の選定にも、ビッグデータが使われた。土砂崩れなどで地区の周囲の道路が使えなくなる。しかし、1本は残る。その先の40㎞離れた仁淀川町が候補地である。

 地区の代表が、その町を訪れて宿泊先や日用品を取り扱っている店舗などを調べている。古い小売店に入って、塩や砂糖などの在庫をみて、「コンビニなどより災害には強い」とうなずく。

 東日本大震災の被災地では、巨大地震から1カ月の間に計724人が亡くなっている。いったんは避難して、命を失ったのはなぜなのか。水や医薬品、食糧などが被災地に十分に届かなかったのである。

 東洋大学教授の小嶌正稔さんは、震災前後の物流のビッグデータから、燃料の供給が十分でなかったことが大きな原因である、と指摘する。

 地震発生の翌日、トラックの動きは震災前の12.5%の水準まで落ちる。主要道路のガレキの撤去は、自衛隊や民間業者が中心となって進んだが、それでも貨物トラックの動きは回復しなかった。

 京都から宮城県を目指した、物資輸送のトラック運転手はいう。

 「予想もしなかった光景に直面した。ガソリンスタンドが閉鎖されていた」


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