7月21日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙で、米シンクタンクAEIのオースリン日本部長が、安保法制を巡る情勢について観察し、安倍総理の安保法制の整備の努力を評価しています。
すなわち、日本の海外における軍事的役割を拡大する法案成立に至る転換点を越えたところで、安倍総理の支持率は低下している。他方で、総理の東アジアの首脳との関係は突然改善するに至った。これは総理がより行動的な日本が日本そして世界のためになるという確信を微動もさせなかったことによる。
先週、集団的自衛権の行使を認めるという憲法解釈の変更に肉付けをする法案が衆議院を通過した。法案が最終的に成立すれば自衛隊は一定の条件の下で武力攻撃を受ける第三国を支援することを許されることとなる。北朝鮮のミサイル攻撃を受ける米国艦船は海上自衛隊の迎撃ミサイルによって守られ得ることになる。しかし、日本の海外での武力行使に対する多くの制限はそのまま残ることになり、安保法制は海外での軍事行動に対する白紙手形からは程遠い。
安保法制は限定的な性格のものであるにかかわらず、安倍総理の支持率は39%に低下し過半数は不支持となった。2万人以上の安保法制反対のデモが東京で発生したが、これは1960年代以降見られなかった規模である。
国内で苦労を強いられている一方で、安倍総理は中国と韓国にとって好ましい人物に突如変貌した。習近平と朴槿惠は過去2年、安倍総理を締め出そうと努めてきたが、日中首脳会談は9月にも実現しそうであるし、日韓両国は国交回復50周年を機にこの秋の首脳会談を模索しつつある。この変化は総理が進めて来たインド、東南アジア諸国をはじめアジアとの関係強化および訪米の成功によるものである。
以上の二つの事態の不思議な逆転をつなぐ共通の糸は日本の安保政策を近代化するという安倍総理の固い決意である。安保法制に対する国内の反対にかかわらず、国民の大多数が日本の安全保障に対する脅威に不安を抱いている。北朝鮮、中国がそれである。或る世論調査では国民の僅か7%が中国は信頼出来ると答えている。別の世論調査では85%が日中戦争の可能性を怖れている。