NHK“ラジオ深夜便”
6時頃に新院駅(シンウオンヨク)という自転車道近くの鉄道駅に到着。駅の周りにレストランが数軒あり、駅舎の裏に屋根付きの絶好のスペースがあったので野営場所に決定。おでん屋でビールとおでん。そのあと、レストランでマッコリ酒とつまみとレーメンを食す。全部で15000ウオン。なんだかんだと豪遊してしまった。
11時頃テントに戻る。12時頃なかなか寝付けないので、韓国のラジオ放送でも聞こうかとポケットラジオでAM局を探していると日本語が聞こえてきた。まさかと思ったがなんとNHKラジオ深夜便である。懐かしの昭和歌謡だ。よくよく思い返してみると神奈川県の自宅でも深夜に韓国や北朝鮮のAM放送が聞こえるくらいなので、逆にソウル近郊で関西局あたりが発信しているNHKが受信できるのは技術的には当然なのだろう。
韓国の自転車キング
(ハングゲ・チャジャンゴ・キング)
9月22日 朝靄に霞む南漢江を眺めながら快調に飛ばす。モダンなデザインの堰(ダム)を幾つも通過する。前日南北漢江合流地点でもらった自転車道地図と道路標識を見ながら進む。南漢江に沿って東側を南下。川が山肌を削って湾曲して流れているような区間では自転車道は険しい山道を辿る。昔から地元民が徒歩で往来してきたような山道を舗装して整備したようだ。
急な山道を登りきったところで休憩所があったので小休止。すると前方からマウンテンバイクに乗った小柄な男性と女子二人がやってきた。三人ともヘルメットを着用して自転車のユニフォームを着こんでいる。男性はよくみるとかなり年輩である。聞くと「韓国の自転車王」と名乗った。年齢を聞くと75歳なりと。顔の色艶もよく身体を鍛えていることが一目でわかる。
自転車王は韓国のすべての自転車道を走破したという認定証を見せてくれた。韓国では自転車道の休憩所に電話ボックスのような形をした“スタンプ・ステーション”が設置されており、そこで手帳にスタンプを押すスタンプ・ラリーになっている。この手帳を持参すれば観光局などで走破証明書を発行してくれる。自転車王はこうして全区間を走破したという特別の認定書を獲得したのである。
自転車王は身長が160センチ足らずである。二人の女子と同じくらいだ。しかしこの小柄な老人のもつオーラに圧倒された。75歳で若者と一緒にサイクリングを楽しんでいる。体力もさることながら若者と一緒に仲間として趣味をエンジョイするという精神のありようが素晴らしいと感動した。これこそが私の究極の人生の目標である。
“15年後はかくありたし”と心に刻んだ。