2022年10月7日(金)

コラムの時代の愛−辺境の声−

2016年4月14日

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藤原章生 (ふじわら・あきお)

記者・作家

記者・作家。北海道大学工学部卒。1989年より毎日新聞記者。ヨハネスブルク、メキシコ市、ローマなどに駐在。2005年、『絵はがきにされた少年』(集英社)で開高健ノンフィクション賞受賞。近著に『ぶらっとヒマラヤ』(毎日新聞出版)。
 

 

 以下、14点を私なりに書き出したものを「」内に収め、現代日本にかなうかどうかをみていく。

エーコ氏の代表作『薔薇の名前

 「第一の特徴は伝統崇拝、伝統主義だ。それはファシズムよりは古いが、後期ヘレニズム文明の中で古代ギリシャの合理主義に対抗する形で生まれた新しい文化だ。

 このころ、地中海地域では、さまざまな宗教の信者たちが、人類創生期に受けた天の啓示に引き込まれ(夢想し)始めた。論理を突き詰める合理主義に嫌気がさした人々が、解読の難しい象形文字や壁画などに書かれた先祖のメッセージにこそ真実があると信じた。それが、伝統主義だ。

 その天啓、つまり古代からのメッセージには互いに矛盾するようなことも書かれているが、こうした矛盾も真実を曲げるものではないとみなされる。古来の『真実』なら、新たに何かを知ろうという進歩はない。できるのは、その古代からのメッセージに新たな解釈を加えることくらいだ」。

 この伝統主義が日本にあるかどうか。天皇制が浮かぶが、それほど絶対のものだろうか。戦前はそうだったかもしれないし、現在でもそれを絶対視する人はいるが、戦前のような感覚で神聖視する人はそうはいないだろう。

 この先、日本人の天皇観がどうなるか言い当てることはできないが、これだけは言える。私の親の世代から私の子供の世代へと下がるにつれ、天皇を神聖視する目は明らかに衰退している。その流れが近未来、逆転するとはとても思えない。

伝統主義、思考よりもまず行動……

 「第二の特徴は、伝統主義に絡んだことだが、近代化の拒絶、非合理主義だ」

 これも現代日本に合致しているとは言いがたい。

 「第三は思考よりもまず行動という姿勢だ。事前に熟考することなくまずは行動せよという考え。その場合、文化は、常に当局に批判的でよからぬものとみなされる」

 「第四の特徴は、決して批判を受け入れず、対立する意見に耳を傾けないという姿勢だ」

 小泉純一郎政権の時代、「抵抗勢力」という言葉が当たり前のように語られ、歩み寄る議論もないまま、「敵か味方か」というレッテル張りが強まった。この傾向は、今の安倍晋三政権の下でもよく見られる。昨年の安保法案の強行採決前、野党の論の進め方にも問題があったが、政権側が野党や学者の意見をほぼ無視したことは、この特徴に近いかもしれない。

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