2024年11月22日(金)

サイバー空間の権力論

2016年6月17日

 しかし、切断することでむしろ自分は成長できるのではないか。経済合理主義から距離を置き、ワークライフバランスを維持することで、逆説的に創造性が得られるのではないか。日本においても3.11後の節電が叫ばれた一時期に、仕事よりも地域の絆が叫ばれたことは記憶に新しい。

 例えば子育てに集中することによって、子供のために更なる労働意欲が生まれたり、地域活動に貢献する中で新しい刺激を受け、それが仕事のアイデアにつながるかもしれない。切断する権利は、そのような労働者の生活の質の向上につながるのではないだろうか。

 無論、切断する権利を取り入れることが労働者の質を高める目的であるというのであれば、それもまたポストフォーディズムの1バリエーションに過ぎないという批判はあり得るだろう。しかし、労働者に成長を求めずに経済はもう回らない。故に、労働者にとって幸福に成長できる方法としての「切断する権利」と捉えるのであれば、それは少なくとも今より良いことであると言えないだろうか。

 フランスの労働法は国内事情を含めた複合的な問題を孕んでおり、切断する権利法案にしても、本稿の趣旨とは別の意図があるのは事実だろう。しかし、少なくとも切断する権利において同国の提案が投げかけていることは、本稿の趣旨からすれば、我々の労働意識を考える上で重要であることは間違いない。

  
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