なぜか疲れてきたニューヨーカーたち
ニューヨークの地下鉄内で眠りこけるニューヨーカーたち(筆者撮影)
ところが。
ここ10年ほどで、ふと気がつくと、ニューヨークでも電車で居眠りをする人の姿が目につくようになってきた。
特に月曜の朝などは、大人も子供も週末の疲れかダルそうに目をつぶり、隣の人にもたれかかりそうになっている人もいる。好意的に考えると、それだけニューヨークの地下鉄も安全になったということだ。
それと同時に、老人たちに席を譲ろうとする若者の数が減った。お年寄りが乗り込んできても、みんなスマートフォンなどを見て知らない顔をしている。
以前は若い男性は、席があっても座ろうとしない人も少なくなかった。席は年寄りと女子供のためのもの、という毅然とした姿勢がカッコよく、見ていて惚れ惚れしたものである。
でも今では、若い男性も大またで電車に乗り込んできてわれ先にと席に座る。
ニューヨーカーが疲れているワケ
その理由は、おそらくニューヨーカーも疲労がたまっているからではないか。平均的な通勤時間が、以前よりかなり長くなってきているためだ。
筆者がニューヨークに移住した1980年当時、学生でもマンハッタンに住むのは普通のことだった。イーストビレッジなど探せばお手ごろなアパートはいくらでもあったし、エレベーターなしのビルなら、さらに家賃は安かった。
だがこの30年あまりで、マンハッタンの家賃は10倍近くに高騰した。
現在マンハッタンで1ベッドルーム(寝室プラスキッチン、リビングルーム)の平均家賃は、日本円にして30万円ほどである。Studioと呼ばれる、いわゆるワンルームでも一月20万以下のところを見つけるのは困難だ。