WEDGE REPORT

2016年6月24日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

家賃の高騰で郊外に逃げ出すニューヨーカーたち

 当然ながら、今ではマンハッタンに住むにはよほどの高給取りでなくては不可能になってしまった。あるいは会社が家賃を負担してくれるビジネスマン、運よく高騰前に購入した物件に住んでいるという、ごく一部の恵まれた人々だけである。

 中産階級のほとんどは、ブルックリンやクイーンズ、ブロンクスなどに引っ越していった。マンハッタンの外に出ても地下鉄の便が良いところはじわじわと値上がりし、現在では社会人でも独身だったらルームメイトを募ってシェアをするのがごく一般的なことになってきている。

 お金のあまりない人々、大家族を抱えている人たちは、安い家賃を求めてどんどんマンハッタンから離れていく。かつては20分程度だった通勤時間が、片道1時間ほどかけて通勤する人も珍しくなくなってきたのである。

 地下鉄に乗っている時間が10分やそこらなら気軽に席を譲っていたニューヨーカーも、45分かかるとなったらおいそれとは譲れない、という訳なのだ。

 その意味でも、ニューヨークの地下鉄事情は東京に似てきている気がするのである。

モラルを促す車内広告

「ポールを独り占めしない」と注意を促す車内広告(筆者撮影)

 そんな中で、最近よく目にするようになったのは、公共モラルを促すキャンペーンポスターだ。日本にもよくある、「お年寄りには席を譲りましょう」というようなたぐいのものである。

 Courtesy Counts.(礼儀は無駄ではない)

 と題された、このキャンペーン。この場合のcountsは「勘定に入る」というニュアンスで、「無駄ではない」という意味になる。

 色々なバージョンがあり、単純に「席を譲りましょう」というのものから、中にはこんなものもある。

 Don’t Be a Pole Hog. Leave room for others to hold on. In other words, share the pole.

(ポールを独り占めしない。他の人も使える場所を空けましょう。要するに、ポールはみんなで共有すること)

 たまにいる、ポールにもたれかかっている人に注意を促すものである。

 ちなみに余談だがHogとはブタのこと。欲張ることを、よく英語で「He is such a hog.(彼は貪欲なブタのよう)」と形容するのだが、ブタにしてみると一番貪欲なのは人間だと言いたいだろうにと思う。

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