Wedge REPORT

2016年9月1日

»著者プロフィール
閉じる

中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

退くに退けない事情、何割が生き残れるか

 こうした苦肉の策でも何とか経営を維持しようとするゴルフ場は一部であり、大半は価格競争に翻弄されながら、撤退することもできずに、延命を図っている。

 撤退できない理由の一つに尾を引く預託金問題がある。預託金は会員権を購入した時に、会員権価格とは別にゴルフ場に預けておいたお金で、ゴルフ場にもよるが数十万円から百万円を超える金額だ。多くは預託金をゴルフ場の建設費や管理費として流用しており、返還に応じられるほど余裕のあるゴルフ場はまれで、大半は会員に対して事情を説明して返還を先延ばししてもらっているのが実態だ。

 会員の側も返還を強く迫るとゴルフ場自体が立ち行かなくなり、プレーができなくなるので、それほど強く要求できない。中にはプレーできる会員を増やすことを条件に、返還を先送りし、返還する預託金を大幅減額するケースもある。「近い将来、倒産件数が一気に増える」(帝国データバンク)という。

 またゴルフ場は山林などを地主から借りてゴルフ場を造成しているため、ゴルフ場を閉めた場合、元の状態に戻して返還する義務があるという。山を切り崩して作ったゴルフ場を元の状態に戻すのは相当の費用が掛かり、これも簡単にはできない。あるゴルフ場の支配人は「辞めたくても辞められない。苦しい中でも前に進むしかない」と内情を打ち明ける。

 見てきたように、構造的に苦しい経営環境の中で、ゴルフビジネスは、対象となるプレーヤーを高齢者から、若者や女性などに抜本的に転換していかない限り展望が開けない。そのためには先行投資の資金が必要となるが、多くの小規模なゴルフ場はその余裕さえない。過去には外資系ゴルフ場が行き詰まったゴルフ場を買収して「受け皿」となってきたが、最近は厳しく選別している。多くのゴルフ場はいわば「ゆでガエル」状態になりつつあり、今後10年間に確実に減少していくだろう。

▽『背水の陣のゴルフ場経営』へ続く

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

 

関連記事

新着記事

»もっと見る