沢村にも同情すべき点はある。巨人の本拠地・東京ドームは左中間、右中間とも膨らみがなくて狭い上、空気が乾燥しているため、12球団で一番本塁打が出やすいと言われている。その上、リリーフに失敗したら、他球団以上にマスコミにこっぴどくたたかれるのだ。02年に1年だけ抑えを務めた河原純一(15年に現役引退)は、私のインタビューにこんな本音を漏らしたことがある。
巨人のクローザーは精神的にキツい
「巨人でクローザーをやるのは精神的にものすごくキツかった。あの狭い球場で、抑えて当然、打たれたらボロクソなんだから。マスコミにはたたかれるし、チームの中の自分に対する目線や雰囲気も変わっちゃうし。ウチは負けられないチームなんだって、そういう意識が強いところでしたからね、巨人は」
そういう環境で投げ続けることに耐えきれなかったのか、02年に5勝3敗27セーブ、防御率2・70をマークした河原は、翌03年には0勝3敗7セーブ、防御率9・41まで成績が急降下。「巨人の生え抜き投手が抑えをやったら、たぶん誰でもぼくと同じことになるんじゃないかな」ともらしていた。
外国人にとっても、巨人の抑えはしんどいらしい。05年から横浜(現DeNA)で3年間クローザーを務めた実績を買われて巨人に移籍したマーク・クルーンは、移籍1年目の08年こそ1勝4敗41セーブ、防御率2・21と好成績を上げたが、シーズン終盤には救援に失敗するケースが増加。08年のCSでは、クルーンが相手打者に死球をぶつけたところで原辰徳監督が交代を命じ、〝抑えの抑え〟として山口鉄也を登板させている。
もし今年のCSで沢村がピンチを招いたら高橋監督はどうするのか、要注目である。
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