米国に対抗し独自の標準を築く中国企業
欧州、米国が中国企業による買収を警戒するのは、買収により中国に欧米企業が保有する高度技術が流出することだ。既に中国は特許申請数では、図‐1の通り米国を抜き去り世界一になっている。米国第一のトランプ政権は、中国が技術力で米国と肩を並べ、やがて抜去ることを懸念していると想像され、技術流出につながる企業買収には反対する立場だ。
外資審査委員会の審査結果を受け、大統領が阻止した中国企業による買収は、オバマ大統領が昨年不許可にしたハイテク企業買収を含め過去3件しかないが、今後は増える可能性が高い。中国企業によるWH買収が申請されれば当然阻止対象となる。
米国政府が中国への技術流出を懸念するのは、中国企業が米国とは異なる標準を作り出すことも影響しているのだろう。ニーアル・ファーガソン・ハーバード大学教授は米国が作り出したIT革命に中国が対抗した例を挙げている。
ネット販売のアマゾンがシアトルで設立されたのは1994年、グーグルがカリフォルニア州のガレージで始まったのが1996年、フェイスブックは2004年にハーバード大学で始まった。ユーチューブは2005年、ツイッターは2006年、iphoneが2007年、配車サービスのウーバーが2009年。マイクロソフトもアップルもアメリカ企業だ。
米国企業が作り出したネット革命に対し、他国は従ったため、他の国でも米国企業が標準になった。日本も例外ではない。しかし、中国は米国企業に対抗する道を選んだ。アリババ、テンセント、百度が作られ、中国の情報は米国企業には渡らなかった。仮に原子力技術が中国に渡り、ITと同様に独自の道を進み情報が開示されなければ、他国にとっては大きな損失になる。