2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2017年6月1日

 ほかにも年齢やサイズによる肉質や量のばらつきも大きく、実際に食用に回せる部分は極めて少ないのだ。

 残りは、よくてドッグフード用。しかし価格は10分の1以下だ。角や毛皮の商品化も進めているが、大きな需要にはなっていない。

 「有害駆除個体を受け入れると補助が出る点は有り難いのですが、逆に個体を選ばず引き取らねばなりません。しかし利用できない部位や個体は、廃棄物として処分する必要があります。その経費が経営を圧迫します」

 肝心のシカ肉供給側では、経営が厳しく悲鳴を上げているのだ。

顔の見える関係で安定供給を実現

 シカ肉メニューを恒常的に提供する外食チェーンがある。「カレーハウスCoCo壱番屋」だ。滋賀県に11店舗のフランチャイズを展開するアドバンスでは、常時「天然鹿カレー」をメニューに並べている。

 増減はあるが月に約1500食、150~250キロのシカ肉を消費しているという。これほどの量のシカ肉をいかに調達しているのだろうか。

 「8年前に各店舗が地域密着メニューを開発することになりました。その頃、中山間地はシカ害がひどいと聞いていて、それならシカ肉カレーはどうかと思いついたんです」と語るのはアドバンスの川森慶子総務部長。

 「ところが、本部から『野生動物の肉は、衛生管理をどのように確保するつもりか』と強く言われました」

 衛生面の安全管理は至上命題だ。全国に1400店舗以上を展開する大手チェーンだけに、1軒でも問題を起こせば影響は大きい。そこで10カ条の衛生基準をつくった。仕留めてからの搬入時間、着弾部位、金属探知機による検査、毛の付着の有無……それらを細かくチェックする体制をつくる。

 幸い同時期にシカ肉販売を模索していた滋賀県日野町猟友会の「獣美恵(じびえ)堂」グループと出会った。彼らと交渉した結果、衛生基準の遵守を元に取引を始める。狩猟実績から量の確保も可能と判断した。その後、県内のハンターともシカ肉の買い取りを契約している。

 調理方法も研究した。特有の臭みを消しつつジビエならではの風味も残さないといけない。一方で高級レストランのような手間もかけられない。試食を繰り返して納得のいく味に仕上げた。

 満を持して販売したシカ肉カレーは評判になった。肉が足りなくなると「獣美恵堂」も休日返上で猟に出て確保してくれた。一方で肉質に問題があったら返品し、厳しく伝え善処を求める。


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