卵の摂取で(栄養的に)気になることはコレステロールだろう。一時(今でも?)「鶏卵は(血中)コレステロール値を上げるので食べないようにしましょう。食べても一日1個以下にしましょう」という情報(栄養指導)が広まった。しかし、この栄養情報は、少なくとも日本人には当てはまらないようだ。
明らかな疾病を持っていて、かつ、主治医から「食事制限を指示されている人」以外は、食べた卵のコレステロールがその人の血中コレステロール値を上げることはまずなさそうだ。仮に少し上げたとしても、それがその人の健康を害することには(どうやら)ならないらしい、ことが明らかにされつつあるからだ。普通の人は「鶏卵を一日に1個」食べることは、むしろ好ましい食習慣であると考えてよい。
食品の価値は栄養素だけではなく、総合的に判断しよう
食べ物の価値は栄養だけでは、もちろんない。おいしさ・利便性・価格など、総合的な判断が必要だ。おいしさは「個人の好み」なので触れずにおくとして、ここでは「食べやすさ」について考えてみる。
牛乳・乳製品と卵は「食べやすさ」は、群を抜いている。牛乳は何も調理せずに「そのまま」飲める。こんな食材はそうあるものではない。卵も似たところがあり(これは日本人に限るようだが)生でも食べられる。煮ても焼いても茹でても揚げても食べられ、しかもいずれの場合でも調理にそれほど手がかからない(手をかけてもおいしく食べられるが)。
この点は、栄養的には価値が高くても、獣肉のように加熱しなければいけなかったり、魚介類のように生で食べるには高度な技術や知識が必要だったりする食材との、大きな違いだ。
「手に入りやすさ」も日常的食材としての重要なポイント。牛乳はきわめて悪くなりやすい食材なのだが、近年では生産・流通・販売過程での衛生管理が高度に発達したおかげで、コンビニでも安心して買うことができる(むしろ、心配なのは消費者が購入後に扱いを間違うことだろう)。その分のコストはかなりかかっているはずだが、それでもつねに安定した価格で購入することができる。
卵は「賞味期限が長い生鮮食品」の代表ともいえよう。販売してある鶏卵には賞味期限が書いてあるが、あれは「生で食べられる期限」だ。加熱するのであればもっと長期間食べられる(ただし、卵の賞味期限は殻を割ったり調理したりせず「そのまま」の状態で冷蔵保存した場合)。
あの女子栄養大学の「イチのおすすめ」
栄養が豊富、入手しやすい、調理が簡単、価格が安定、おいしい等々、「食材」としての適性をたくさん持っている牛乳・乳製品と卵は、「優先して摂取する食品」のトップ! コレは何も筆者の個人的独断ではない。日本の栄養分野をリードする女子栄養大学が提唱する四群点数法という食事法がある【※1】。
エビデンスがそこそこあり、考え方がシンプルで理解しやすく、日常生活の中で実践しやすい「食事法」だ。ビジネスパーソンにとっても取り入れやすい食事法なので、いずれここでご紹介したい。この中で牛乳・乳製品と卵は「まず優先的に摂取したい食品」と明確に位置づけてある。数え切れないほどある食材の中から「牛乳・乳製品」と「卵」だけを特別扱いしてあるのだ。
しかも、「けっして食べ忘れることのないように」と、牛乳・乳製品と卵(の少なくともどちらか)を朝食で食べるように強く推奨してある。この考え方を「他にやること・考えることが山ほどあって、食生活のことなどに長時間を費やすヒマがないビジネスパーソン」が利用しないテはない。
牛乳・乳製品と卵は、ビジネスパーソンが常備しておく食材のトップである。
【※1】http://4fgmethod.jp/about/
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