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2017年11月27日

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金子熊夫 (かねこ・くまお)

外交評論家・エネルギー戦略研究会会長

外交評論家。元外交官、外務省初代原子力課長、元東海大学教授。退官後エネルギー戦略研究会(通称EEE会議)を創設し、会長として現在も活躍中。主な著書は「日本の核 アジアの核」(朝日新聞社刊)、「小池・小泉『脱原発』のウソ」(飛鳥新社、11月6日発売)など。1937年愛知県生まれ。ハーバード大学法科大学院卒。

 一方、日本国内では反原発派が、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」が廃炉になり、六ヶ所再処理工場の完成が遅れ、プルサーマルも停滞している状況で、プルトニウムが48トンもたまっているから、核不拡散上問題だ、海外からも疑惑を持たれているから六ヶ所工場を廃棄せよと主張している。一部のマスコミもこれに同調して盛んに警鐘を鳴らしているが、これは全くお門違いである。反原発派の本当の狙いは、日米協定問題をテコに六ヶ所工場を廃棄に追い込み、日本の原子力発電自体を葬り去ることである。

 反原発派や一部マスコミは、日本が所有している48トンのプルトニウムで「約6000発の原爆が製造可能だ」などと書き立てて、盛んに危機感を煽っている。プルトニウム8キログラムで長崎級原爆が1発できるという単純計算だが、これは大きな間違いだ。理由はごく簡単に述べれば次のとおり。

1先ず、48トンはすべて「原子炉級プルトニウム」と呼ばれるもので、「兵器級プルトニウム」と比べ組成が違い、純度も著しく落ちるので、これで実用的な核爆弾は作りにくい。現実に世界的に見ても、原子炉級プルトニウムを用いた核実験は一度も行われたことがない。

2次に、48トンのうち4分の3以上は英仏での委託再処理で抽出されたもので、現在も両国に保管されている。残りの約10トンは、英仏から返還されたものや東海村で再処理されたもので、その大部分はウランとの混合酸化物(MOX燃料)になっており、容易には核兵器製造に転用しにくい形態になっている。今後六ケ所工場(年間処理能力800トン)が本格操業すれば年間最大約8トンのプルトニウムが生産されるが、これらもすべてMOXの形で保管される。

3その上、六ヶ所工場には、核不拡散条約(NPT)と国際原子力機関(IAEA)との協定に基づき、厳重な査察(保障措置)がかけられており、IAEA査察官が常時駐在している(駐在事務所は工場の構内にある)ので、軍事転用は起こりえない仕組みになっている。なお、日本のプルトニウムの在庫量は原子力委員会によって毎年グラム単位で克明に公表されている。

4また、日本のプルトニウムは、すべて使用目的がはっきりしており、いわゆる「余剰プルトニウム」ではない。いずれプルサーマルが本格的に再開され、さらに青森県大間に建設中のフルMOX原発が稼働すれば、順次消費されていくものである。

 これらの重要な点をすべて無視して、一方に偏った報道やいい加減な解説を行い、一般市民の不安感や恐怖心を煽るのは反原発派の常套(じょうとう)手段だが、それに騙されてはいけない。

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