独ディ・ツァイト紙政治担当編集委員Jochen Bittnerが、10月23日付けニューヨーク・タイムズ紙に、EU内では後から加盟した東欧諸国と元加盟の西欧諸国との間に亀裂があり、双方に責任がある、とする解説記事を書いています。要旨は以下の通りです。
1990年代初期の欧州共産主義の崩壊後、チェコ、ポーランド、スロヴァキア、ハンガリーの4か国はヴィシェグラード・グループを作った。同グループは、EUとの結びつきを強め、2004年にEUに加盟した。
当初共産主義崩壊後の統合の旗手であったヴィシェグラード・グループは、今日では西欧が中東欧を完全には統合できないことの象徴となっている。4か国の政治家はEU反対を唱え、「EUは押しつけがましい」と批判している。
4か国は、西側の主流に与することを拒み、イスラム難民の受け入れを拒否し、民主主義のチェック・アンド・バランスを煩わしいものと考える。
こうした傾向はヴィシェグラード・グループにとって新しいことではなく、過去10年の間に見られた。過去10年、EUは北の債権者と南の債務者の間の債務危機に忙殺され、EUを信じる西と信じない東との亀裂が広がるのを見落とした。その間に中欧で疎外感が定着した。
こうなったことについては東西の双方に責任がある。
西欧は、東欧はEUに加盟しただけで満足したものと考え、東欧を二流国家群として扱った。ヴィシェグラード・グループ諸国がEUで何か提案しても無視されるか、拒否された。西欧は東欧との経験の違いを重視しなかった。1945年以降、米兵はエルベ川の東に足を踏み入れなかった。
ヴィシェグラード・グループ諸国が西側の約束に幻滅を感じたのは理解できる。ヴィシェグラード・グループ諸国はEUに加盟した時、安定を期待したが、加盟直後EUはまずユーロ危機、次いで大量の移民流入で揺れた。自由は、安全ではなく新たな不安定を意味した。多くの中東欧の人にとって、西側の一員になりながら依然取り残されることを恐れなければならないのはショックであった。
それとともに、中東欧では、40年間の共産主義支配の結果、国民相互、政治グループ間の不信感は大きい。専制主義時代の遺産はいまだに残っている。
この間、中東欧の国民は自由に適合する努力を怠った。経済は自由化したが、自分たちの心を自由化することを忘れた。
東西は両者が共存する治療法を施さなければならない。EU内の東西の対立は、放っておけばBrexitが些細なことに思われるような重大な事態になる恐れがある。
出典:Jochen Bittner,‘Is the Czech Republic Turning on the West?’(New York Times, October 23, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/10/23/opinion/czech-republic-european-union.html