2024年7月16日(火)

WEDGE REPORT

2018年4月18日

「狡兎死して走狗烹らる」か、「トカゲの尻尾切り」か
正当な捜査が行われるか、国民は半信半疑

 金議員は関連を否認していたが、16日午後、ついに金氏のオフィスに2回訪問していたことや金氏が薦めた人物の情報を青瓦台に伝えたことを認めた。そして、金氏が大阪総領事として薦めた人物は青瓦台関係者と面談までしたことが明らかになった。この事実は、少なくとも世論を操作した金氏のパイプは青瓦台の内部まで繋がっていた、ということを意味する。

 ただ、金氏の操作行為が誰の指示によるものなのか、どれだけの選挙や政局に影響を与えたのかは今の所、不明だ。もうしばらく捜査の推移を見守るしかない。

 政権の立場から見れば、有利な世論を作り、支持者を増やしてくれる金氏の行為はプラスに働いていたのかもしれない。

 しかし、おそらく大統領選挙直後からの金氏の要求は大きな負担になったのだろう。すばしこいうさぎが死ねば、猟犬は不要になって煮て食われるという意味の「狡兎死して走狗烹らる」という諺があるが、文政権にとっては金氏こそまさに不要でやっかいな存在となっていたのかもしれない。

 金氏もそのような雰囲気を察知していたのだろうか。逮捕される前、最後にネット上に残した文章がまた意味深だ。

 彼は3月14日、SNSに「2017年の大統領選挙でコメント操作組織の黒幕が誰か知っているか? 本当にバラしてみようか? 真実を知ればパニックに陥るだろう」と、文在寅大統領が当選した2017年の大統領選でコメント操作組織があったことと、場合によってはその黒幕を暴露するという「脅迫まがいのコメント」を残したのである。

 それが誰に向けた話なのかは、金氏と本物の黒幕だけが知るだろうが、金氏はそのコメントを残してからわずか一週間後、電撃的に逮捕された。

 今回の事件について韓国内では警察と検察の捜査が果たして公正に行われるのかと疑問視する声が出ている。それも無理からぬ話だ。金氏を逮捕した警察が捜査についての関連記録を検察に送る際に金議員と関連する内容を除いて送っていたことが明らかになったのだ。

 また、3月25日に逮捕しておきながら、4月13日まで何の発表もしていなかったということも政権に「忖度」した警察と検察が事件を隠蔽、縮小しようとしたのではないかという不信感を生んでいる。

 文在寅大統領は野党議員時代、朴槿恵政権下の国家情報院が大統領選のさなかに、ネット記事に政府の意図が反映されたコメントを記載していたことを問題視し、選挙に介入したと特別検察捜査を求めたことがある。

 そして、その後も国家情報院がコメントで世論を操作したとしつこく朴槿恵政権を非難してきた。また、大統領の演説文が外部に流出したことを弾劾の理由の一つとして朴槿恵前大統領を弾劾した。

 今回の事件と与党重鎮議員の関連疑惑、そして外交上極めて重要な総領事に関する人事情報が外部に漏れたことについて文大統領はどのような反応を見せるだろうか? そして、安知事の失墜は予定されていたことだったのか? 60%台の高い支持率を保つ文大統領が今回の疑惑についてどのような立場を示すのか関心が集まっている。

  
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