WEDGE REPORT

2018年9月5日

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木村正人 (きむら・まさと)

国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト。元産経新聞ロンドン支局長。米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員、慶應義塾大学法科大学院非常勤講師などを歴任し、2012年独立。近書に『欧州絶望の現場を歩く』(ウェッジ)。
 

 欧州内の軍事協力として、過去に英・独・伊・スペインの4カ国が戦闘機タイフーンを共同開発したが、導入したのは欧州では4カ国とオーストリアのみ。一方、米ロッキード・マーティンが開発主体となり、西側の協力を得たステルス戦闘機F35は、欧州では英国、イタリア、オランダ、デンマーク、ノルウェーが調達、ベルギーやフィンランドも導入を検討している。

 ベルギーの国防ジャーナリストは「米国の開発力は群を抜いており、今後20~30年、F35の優位性は揺るがない。欧州は米国依存度を減らしていかなければならないが、50年は優にかかるだろう」と漏らす。

 NATOとEUの軍事的なアセットは完全にダブっている。NATOとEUだけでなく、PESCOと欧州介入イニシアティブの「断片化」と「重複」を避けるのは難しい。しかしアジア太平洋への戦略的回帰を強める米国が欧州から軸足を動かすのは歴史の必然であり、欧州の安全保障の再構築も不可避である。独シンクタンク「ジャック・ドロール研究所」のニコル・ケーニヒ上級研究員はこう警鐘を鳴らす。

 「イタリアが署名を先送りしたのは、イニシアティブがNATOやPESCOとどのように相互補完するのかをまず知りたいというのが理由だ。NATO幹部もイニシアティブはPESCOの真の妨げになる恐れがあると警告している。断片化と重複を避けるために、PESCOとイニシアティブのリンクをはっきりさせなければならない」

 プーチンは天然ガス・パイプライン計画を巡り、ドイツのシュレーダー元首相、イタリアのベルルスコーニ元首相、フィンランドのリッポネン元首相を取り込んだ。そのプーチンとトランプに睨(にら)まれながら、EUを離脱していく英国を繋(つな)ぎ止め、欧州の安全保障を再構築するという「産みの苦しみ」が始まった。

  
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◆Wedge2018年9月号より

 

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