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2018年10月19日

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 トヨタのAutono-MaaSは、複数のモビリティサービスを統合し、ユーザーがルート検索や決済などをシームレスに行うことができるようにするというMaaSではありません。e-Paletteという自動運転の次世代電気自動車と、その運用システムというプラットフォームです。

Autono-MaaSは「移動する部屋」というハードウェア

 モビリティサービスのソフトウェアのプラットフォームであるMaaSに対し、Autono-MaaSは「移動する部屋」というハードウェアです。それは、サービス事業者が購入する、または利用料を負担する必要があるでしょう。

 自動車産業においてプラットフォームといえば、フレームやサスペンション、ステアリング、パワートレインといった、車にとって必要不可欠な要素を持つ車の基礎部分を意味します。プラットフォームを共通化することで、開発や生産のコストを削減することができます。

 モビリティサービスは、どれも「A地点からB地点へ移動するための手段」という明快な価値を提供しますが、「移動する部屋」を使ってユーザーに提供されるサービスはまちまちです。Autono-MaaSは、まちまちなサービスに共通して使える「移動する部屋」というプラットフォームのようです。

 トヨタは、移動中に料理を作って宅配するサービスや、移動中に診察を行う病院送迎サービス、移動型オフィスなどを、その例として挙げています。

 トヨタは、自動運転技術によって安全性を向上させ、ドライバーの運転を支援し、クルマ自体の価値を高めて、人々がクルマを購入して所有するという習慣を続けてもらおうと考えているようです。そして、自家用車を否定するMaaSではなく、Autono-MaaSというコンセプトを打ち出し、新しい価値を創造しようとしています。

 スウェーデンのIKEAの未来研究部門(SPACE10)も、"Spaces on Wheels"という「移動する部屋」とほとんど同様のコンセプトを発表しています。運転に専念する必要がなければ、クルマという空間の中で何ができるようになるのかという問いかけです。こちらでも、トヨタと似たようなユースケースが紹介されています。

 しかし、自動運転車でなくても、運転手付きの「移動する部屋」でも、ニーズがあるのであれば、移動中に料理を作って宅配したり、診察を行いながらの病院送迎サービスや、移動型オフィスなどのサービスは提供できそうです。自動運転車を利用した、「A地点からB地点へ移動するための手段」以外の新しい価値の創造はこれからのようです。

  
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