世界で火花を散らすパブリック・ディプロマシーという戦い

2019年4月23日

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桒原響子 (くわはら・きょうこ)

日本国際問題研究所研究員・未来工学研究所研究員・京都大学レジリエンス実践ユニット特任助教

1993年生まれ。2012年米国ウエストバージニア大学において、国際政治学や通訳翻訳等を学び、2017年大阪大学大学院国際公共政策研究科修士課程修了。笹川平和財団安全保障事業グループ研究員、外務省大臣官房戦略的対外発信拠点室外務事務官を経て、現職。専門は、国際公共政策、パブリック・ディプロマシー、ストラテジック・コミュニケーション、メディア研究、世論等。

 現地でも感じたが、米国の認識と、日本の危機感との間のギャップがあまりにも大きすぎる。「チャイナ・ウォッチ」に関しても、以前、筆者がワシントンにあるシンクタンクの一部職員にインタビューしたところ、「あんなものは誰も真面目に読まない。ちゃんとみんなプロパガンダとわかっている。もちろん、田舎の方に行けば、そんなことも知らずに目を通す市民もいるが……。ここ(ワシントン)では目を通して捨てる、あるいは目を通す前に捨てるだけだ」と苦笑していた。

 「みんな」とはどの範囲を指すかは不明だが、少なくともワシントンの中では一定の警戒感は出てきているということだろう。それがトランプ政権になって、中国に対する不信感や警戒感が増大しているから、なおさらだ。

今こそ、危機意識をもて

 しかし、日本はどうだろう。いったい何人の日本人が「チャイナ・ウォッチ」の存在や、中国の世論工作が日本でも展開され始めたことを、認識しているのだろうか。

 情報通信技術の発展とインターネットの普及により、情報は偏り、操作され、視聴者や読み手は自らの嗜好に沿ったニュースだけが選択されて供給されていることに気付かないという状況が起こっている。「フェイクニュース」までもが出回り、実際に米国大統領選に影響を与えたとまで言われるようにになった。

 日本国内においては、「チャイナ・ウォッチ」の存在や役割自体を知っている国民もそう多くない。そうした中、「広告」を目にしたらどうだろう。「借り船戦略」にまんまと引っかかり、信じてしまうかもしれない。日本政府としては、「これは歴とした中国の世論工作だ」と、毅然と対応し相手にもしないという対応策が賢明かもしれないが、そもそも「広告」の存在や中国のPD事態を知らない国民にとっては、信じるか信じないかは、自分次第となってしまっている状況なのだ。

 「危機管理」。この言葉が、日本のPDを考えるとき、いつも頭に浮かぶ。国家としての危機管理はもとより、国民一人一人の意識改革も必要となっているのではないだろうか。情報が飛び交う中で、一方向のみに偏ることなく、あらゆる視点で情報を汲み取り、正しく情報を判断する力を養う努力は、決して難しいことではないはずだ。中国のシャープパワーの矛先が日本に向いたとき、国家としての対応も必要だが、我々国民一人一人がそれをどう受け止め、どう対応するか。我々自身も、しっかりとした対応が必要である。

後編へ続く

■修正履歴:3ページについて、ガーディアンのデータに間違いがある可能性が判明したため、「チャイナ・ウォッチ」の部数等、修正致しました(2018/04/24 21:30 編集部)

  
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