Wedge REPORT

2012年3月19日

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企業と医療の両輪で取り組むべき

 さまざまな問題が横たわる中、風穴を開ける医師がいる。前出の石蔵准教授は、診察に時間をかけるため、初診のみ自由診療で5万円(1月から10万円)、以後は保険診療を基本に予約料(3000円)という診療を行う。

 石蔵氏の患者の一人で関西在住の上田善彦さん(56)は「3年間で4回病院を変えたが薬ばかりで治らなかった。藁をもすがる思いで受診したら、石蔵先生の投げかける『大丈夫』といった温かい言葉で肩の荷が下りた。海外出張先からも様子を気にして電話をかけてくれ、先生と常に“つながっている”との安心感があった」と語る。初診料5万円は高額かもしれないが、病院を転々としてうつ病が長期化するケースがあることを考えれば、費用対効果からもこうした治療法も有効ではないか。自由診療の広がりは、うつ病治療を変えるトリガーになる可能性がある。

 昨今では、従来型のうつ病と違い、原因も不明で薬も効きにくい新型うつ病の事例も散見される。「うつ病治療はまだまだ発展途上の段階。医療の進歩が追いついたわけではない」(菊山裕貴・大阪医科大学医師)。それゆえ、患者が減らないすべての責任を精神医療界に押し付けることは慎むべきだろう。

 うつ病患者を減らしていくには、企業と医療の“両輪”で取り組んでいかなければならない。企業には、「うつ病の予防に力を入れるべき」(山本晴義・横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)との視点と対策が必要だ。

 一方、精神医療界には、ばらつきの大きい治療法を改善していく仕組みが必要だろう。先述したように、EBMに加えて、標準的な治療法の確立を急ぎ、精神医療に携わるすべての医師の技量レベルを一定以上に担保することが求められる。そのためにも、医師がどのような治療をし、どれくらい治癒させたのかという、“結果情報”が見える化される仕組みを、国を挙げて整備していくべきだ。

*関連記事:「社内うつ激増 問われるトップの本気度」はこちらから

[特集] 「心の病」にどう向き合うべきか?

◆WEDGE2012年2月号より


 




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