WEDGE REPORT

2019年10月21日

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中西輝政 (なかにし・てるまさ)

京都大学名誉教授

1947年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。ケンブリッジ大学大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、京都大学大学院・人間環境学研究科教授。2012年4月より京都大学名誉教授に。専攻は国際政治学、国際関係史、文明史。近著に『日本の悲劇 怨念の政治家小沢一郎論』(PHP)がある。

 他方、五つ目として、米国の国際政治学者キッシンジャーらが早い段階から提唱していた諸大国から成る世界、いわゆるバランス・オブ・パワーの世界だ。超大国の米国に加え、欧州や日本、そしてやがて再浮上するであろうロシアや大きく成長した中国という諸大国による、多極化した世界での勢力均衡的な外交によって秩序が形成される世界像が示されていた。

 90年代に圧倒的な力を誇った米国のクリントン政権は当初、覇権国としてソマリアやユーゴスラビアへの介入やハイチの人道支援など、地域紛争に積極的に関与しようとした。しかし、米国世論やメディアの一部では、そうした紛争は当事国の責任で対処するべきだとして米国の介入に反対する「草の根」の声がふつふつと湧き出した。トランプ政権の「アメリカ・ファースト」や「カムホーム・アメリカ」という孤立主義への大きな流れが浮上し始めていたのである。

 それゆえ、私は今こそ90年代の米国を今一度深く検討することが、トランプ政権を生んだ今日の米国を深く理解する上で重要な手掛かりだと考えている。当時、米国は世界をどう見ていたのか。経済と対外コミットメントのバランスをどう捉えていたのか。米国経済の持続可能性をどう見積もっていたのか。これらは「世界の警察官」でいる気持ちがえていくプロセスと深いところで相互作用があったのではないだろうか。

*「世界秩序は「競争的多極化」へ――日本が採るべき進路とは(後編)」へ続く
(10月25日公開予定)

現在発売中のWedge11月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■ポスト冷戦の世界史 激動の国際情勢を見通す
Part 1 世界秩序は「競争的多極化」へ 日本が採るべき進路とは 中西輝政
Part 2   米中二極型システムの危険性 日本は教育投資で人的資本の強化を
             インタビュー ビル・エモット氏 (英『エコノミスト』元編集長)

Part 3   危機を繰り返すEUがしぶとく生き続ける理由  遠藤 乾
Part 4   海洋での権益を拡大させる中国 米軍の接近を阻む「太平洋進出」 飯田将史
Part 5   勢力圏の拡大を目論むロシア 「二重基準」を使い分ける対外戦略 小泉 悠
Part 6   宇宙を巡る米中覇権争い 「見えない攻撃」で増すリスク 村野 将

  
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◆Wedge2019年11月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

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