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2019年10月25日

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中西輝政 (なかにし・てるまさ)

京都大学名誉教授

1947年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。ケンブリッジ大学大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、京都大学大学院・人間環境学研究科教授。2012年4月より京都大学名誉教授に。専攻は国際政治学、国際関係史、文明史。近著に『日本の悲劇 怨念の政治家小沢一郎論』(PHP)がある。

 第二に、当面、北朝鮮の核ミサイルに対する抑止力の向上が安保戦略上不可欠である。すでに小型化、弾頭化された核ミサイルを持ち、矛先をこちらに向けている以上、自衛のための敵基地攻撃能力について議論を急ぎ、政治的な決断が必要になる。

 第三に宇宙・サイバー分野におけるテクノロジーに投資をして、独自の防衛技術を高めていくことは待ったなしである。また安全保障と経済が表裏一体の関係になっているため、きめ細かな技術管理、貿易管理を徹底することも重要になる。

 第四に日本のシーパワーをインド洋まで展開する「インド太平洋構想」を浸透させることである。普遍的価値観、特に法の支配とルールに基づく国際秩序を広め、ASEAN、インド、豪州とも協力し現状変更を挑む中国を国際政治的に「包囲」する外交が不可欠だ。さらにオイルシーレーンを守るためにも、イランとの外交関係を維持しつつ、自国の船舶を守るために自衛隊として役割を果たすべきである。

 また日米同盟をもり立てる観点からも、「グローバル・ブリテン」を掲げる英国との安保協力をインド太平洋で恒常的に進めることは重要な点だ。英国の空母「クイーン・エリザベス」と海上自衛隊が東シナ海で共同訓練をすることで、ホワイトハウスの関心は高まり、米国の「航行の自由作戦」の効果も一層高まるはずだ。さらには、たしかにインドと豪州は必ずしも仲が良くないが、そこに英国が入ることで、英国との協力関係が強固な豪州も旧宗主国の英国に対するプライドがあるインドも積極的にインド太平洋に関与を強めることになろう。

 国際秩序が、大国同士の競争的、対立的な多極化世界に移行しようとする時代だからこそ、日本は少しでも「協調的な多極世界」をめざす外交的努力を図りつつ、他方で日米同盟と自力をそれぞれ強化し、現状変更勢力に重層的に対処できる戦略を描き、それらを体系的に実行に移さなければならない。それが日本の生命線になる。

現在発売中のWedge11月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■ポスト冷戦の世界史 激動の国際情勢を見通す
Part 1 世界秩序は「競争的多極化」へ 日本が採るべき進路とは 中西輝政
Part 2   米中二極型システムの危険性 日本は教育投資で人的資本の強化を
             インタビュー ビル・エモット氏 (英『エコノミスト』元編集長)

Part 3   危機を繰り返すEUがしぶとく生き続ける理由  遠藤 乾
Part 4   海洋での権益を拡大させる中国 米軍の接近を阻む「太平洋進出」 飯田将史
Part 5   勢力圏の拡大を目論むロシア 「二重基準」を使い分ける対外戦略 小泉 悠
Part 6   宇宙を巡る米中覇権争い 「見えない攻撃」で増すリスク 村野 将

  
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◆Wedge2019年11月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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