2024年11月22日(金)

日本人秘書が明かす李登輝元総統の知られざる素顔

2019年11月11日

皇室を敬愛する「日本語族」の翻訳家

 日頃、皇室と台湾の関わりが報じられることはほとんどないが、台湾のとくに「日本語族」と呼ばれる世代の方々にとっては、皇室は特別な存在だ。私たち日本人と同様に、あるいはそれ以上に、皇室を敬愛する台湾人がいることを知らしめるエピソードがある。

 その方は李英茂さん。今年90歳を迎える日本語族だ。翻訳家であり、宜蘭県に残る日本時代の史跡に関する日本語資料の翻訳計画で責任者を務めたこともある李英茂さんは、平成30(2018)年3月28日、天皇皇后両陛下(現在の上皇上皇后両陛下)が沖縄県の与那国島を行幸されるというニュースに接した。

 与那国島と台湾との距離はわずか110キロあまり。晴れた日には与那国島から台湾の山並みが見えるという。途中「日本最西端の碑」にお立ち寄りになられるとのことで、その石碑の前に立たれる両陛下は海の向こうの台湾への思いもお持ちではないだろうか、と李英茂さんは考えた。

 李英茂さんはこの日、台北からはるばるやって来た台湾人と日本人の友人の4人で正装し、与那国島に最も近いとされる南方澳へ向かった。山の上にある小学校の屋上へ校長先生の好意で上がらせてもらい、午後3時20分、両陛下の与那国島御到着の時間に合わせ4人で直立遥拝、君が代を奉唱し、萬歳を三唱したという。

 この日、李英茂さんは次のような歌を詠まれた。

  海はるか与那国島の一点のかしこきあたりわれ遥拝す

 段々と少なくなっている台湾の日本語族の方々だが、今もなおこれほどまでに皇室に敬愛される人々がこの台湾にいることをぜひとも多くの日本人に知ってもらいたいと思う。このエピソードは、台南在住のDさんが書かれたメールマガジンから要約させていただいた。この場を借りて御礼申し上げたい。奇しくも李英茂さんは、令和元年春の叙勲で、地方史における日本理解の促進に寄与した功績で旭日双光章を受章されている。あわせて心よりお祝い申し上げたい。


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