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2020年1月6日

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滝田洋一 (たきた・よういち)

日本経済新聞社編集委員・テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』解説キャスター

1981年慶應義塾大学大学院修了。金融部、チューリヒ支局、米州総局編集委員などを経て、2011年より現職。08年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。近著に『世界経済 チキンゲームの罠』(日経プレミアシリーズ)。

北朝鮮、中国の思惑

 中東情勢は一触即発なのである。そしてその行方を、固唾(かたず)をのんで見守る人物がいる。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長である。中国共産党の機関紙「人民日報」系の「環球時報」の編集長が1月4日、こうツイートしている。

「米国によるイランに対するこのような屈辱的な振る舞いは、北朝鮮に対する次のようなメッセージとなろう。すなわち、もしおまえが核兵器を持たないなら、われわれはおまえをもっと乱暴に扱うぞ、と。今や北朝鮮はたぶん、こう考えるだろう。何を失っても、核兵器だけは失うまい、と」

 以心伝心とはこのことだろう。権力政治のプレーヤーとして、トランプ大統領も、中国の習近平国家主席も同じように考えていよう。そして金委員長もまた。折しも北朝鮮では、朝鮮労働党中央委員会総会が12月28日から31日まで、4日間と異例の長さで開かれた。

 「世界は遠からず、朝鮮が保有する新たな戦略兵器を目撃することになる」。金委員長は米国による経済制裁を非難して、そう啖呵(たんか)を切った。「米国が対北朝鮮敵視政策を追求するなら朝鮮半島の非核化は永遠にない。われわれが公約に一方的に縛られる根拠はなくなった」とも述べた。

 非核化交渉で米国が折れなければ、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を再開するぞ、と示唆しているようにみえる。これに対しトランプ大統領は12月31日、駄々っ子をあやすように述べた。「金正恩委員長は非核化の合意にサインした。彼は約束を守る男だ」

 さすがの米国もイランと北朝鮮の二正面作戦は戦えない。

 しかも核兵器を、イランはまだ保有していないが、北朝鮮はすでに保有している。米国がイラン問題で足をすくわれるなら、ここは鬼の居ぬ間の洗濯とばかりに北朝鮮が核実験やICBM発射に出ないとも限らない。

 そして気になるのは、1月11日の台湾総統選後の中国の出方である。総統選ににらみを利かせるかのように、19年12月17日に中国は国産初の空母「山東」を就役させている。中国はその山東を就役前の試験航海と称して中国と台湾の間の台湾海峡を通過させている。

 もうひとつ見逃せないのは、中国、ロシア、イランの3カ国が19年12月30日までの4日間、中東のオマーン湾で海軍合同演習を実施している点だ。準軍事同盟関係にある中ロはイランを後押しし、米国を牽制(けんせい)している。米国を中東にがんじがらめにしつつ、自らは世界的規模で巻き返しに出る。

 習主席がそんなソロバンをはじいているなら、貿易合意での米国側の得点など吹き飛んでしまう。新たな年明けに経営者や投資家が目を凝らすべきは、白石が簡単に黒石にひっくり返されてしまうオセロゲームのような世界なのである。

  
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