世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年1月14日

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 北朝鮮は、2019年12月8日と14日にミサイルエンジンの実験を行った。二回目の実験は、北朝鮮北東部の東倉里(トンチャンリ)の発射場で行われた。東倉里は、2017年3月に北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)用のエンジンの実験を行った場所であり、2018年6月のシンガポールでの米朝首脳会談で、トランプ大統領が、金正恩委員長が非核化の第一歩として解体すると約束したと述べた施設であるので、重要である。

Jae Young Ju/iStock / Getty Images Plus

 12月の実験は、北朝鮮が米国との交渉が進まないことへのいらだちを示すものと見られるが、米国を交渉に引き出すための揺さぶりの段階を超えたもので、北朝鮮がミサイル能力の向上に真剣に取り組んでいることを示したものと見てよいだろう。

 金正恩は一方的に2019年12月31日を交渉期限として設定し、それまでに米国が制裁の緩和を含む一層の譲歩を持って交渉のテーブルに戻らないかぎり兵器の実験を再開すると述べてきた。米国は交渉を再開すべく、ビーガン特別代表が交渉の再開を模索したが、北朝鮮側と接触できなかったようである。

 そもそもの原因は、非核化についての米国と北朝鮮の基本的立場の違いにある。米国は、当初、北朝鮮から完全で検証可能で、不可逆的な非核化を求めようとした。これに対して、北朝鮮は、朝鮮半島の非核化と制裁解除を主張した。2018年シンガポールでの米朝首脳会談では、トランプ大統領は米国の非核化の基本を明確に主張せず、非核化についての米朝間の思惑の違いを残したままとなり、それが引きずられた形になっている。

 このように、交渉に臨む北朝鮮と米国の立場には大きな隔たりがあり、交渉を再開する条件は整っていないといえる。そのような状況の下でたとえ交渉が再開されたとしても、実質的な進展は期待できないだろう。北朝鮮はそれを見越して12月のミサイル実験に踏み切ったものと思われる。

 2019年12月の二度にわたる実験は、ICBMのエンジン技術の向上に関するものと言われ、北朝鮮が ICBM の技術習得を目指していることを示唆している。

 結局、2019年12月31日までに米朝間の交渉は再開されなかったので、北朝鮮がICBMの実験をする可能性は高くなったと言えよう。そうなると、トランプ大統領は黙っていられないだろう。トランプは、北朝鮮のICBMは米国にとって脅威を与えるものとなり許せないと言ってきた。すでにトランプは、大統領選挙が行われる本年に、米朝関係が再び危機的状況になる恐れを排除できないと考えているようであり、北朝鮮が大統領選挙に介入すべきでないとツイートしている。

 もし北朝鮮がICBMの実験再開に踏み切れば、それは米朝首脳会談の成果を誇示してきたトランプ大統領にとって痛手であるのみならず、米朝関係を再び緊迫化させることになるだろう。2020年は、朝鮮半島をめぐる東アジア情勢が再び大きく動く年になる恐れがある。

 日本にとって、北朝鮮をめぐる情勢は、決して好ましいものではない。北朝鮮が非核化を進めないまま、ミサイルの能力を向上させることは、日本にとって、米国以上の脅威となる。また、日本が重視する拉致問題の解決に向けても、北朝鮮は交渉のハードルを上げてくるかもしれない。日米同盟を基軸としつつ、国連安保理決議に違反し続ける北朝鮮に対しては、多くの諸国と協力しながら働きかけて行くしかないだろう。

 

  
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