2月8日、訪日中のラーブ英外相と茂木外相との間で、第8回日英外相戦略対話が行われた。会談では、英国のEU離脱後も引き続き、日英が価値を共有するパートナーとしてグローバルなリーダーシップやインド太平洋へのコミットメントで協力を進めていくことが確認された。今回の協議を踏まえて発出された共同プレスステートメントの第1パラグラフは、次のように言っている。
「日本と英国は最も緊密な友人であり、パートナーである。本日、我々は、気候変動に対処し、新しい技術の潜在能力を安全に活用し、地域の安全保障を維持し、持続可能で自立的な開発を促進し、自由貿易を強化し、ルールに基づく国際システム並びに民主主義及び人権を擁護することを含め、グローバルなリーダーシップを発揮すべく共に取り組むことへのコミットメントを再確認した。我々は、自由で開かれたインド太平洋へのコミットメントについて協議するとともに、善を促進する力としてのグローバルな英国という英国のビジョンについて議論を行った」
EUを離脱した英国にとり、経済連携は最優先課題である。日本にとっても、英国との経済関係を、英国がEUに加盟していた時と同様に維持することが利益になる。「日EU経済連携協定(EPA)を日英間の将来の経済的パートナーシップの基礎として用いるとの過去のコミットメントを再確認した。両国の自由貿易に対するコミットメントに沿って、我々は、新たなパートナーシップを日EU・EPAと同様に野心的で、高い水準で、互恵的なものとするために速やかに取り組む」と共同プレスステートメントにある通り、スムーズに進むと見られる。
経済の分野では、英国のTPP11への加盟問題もある。英国は既に2018年より、TPP11への加盟に関心を示している。英国がTPP11に加盟することの意義の一つは、TPP11の側から見ると、TPP11の世界のGDPに占める割合が、現行の13~14%から17%に拡大することである。これはTPP11の影響力拡大につながり得る。もう一つの大きな意義は、英国のインド太平洋へのコミットメントが格段に強化される点である。TPP11への加盟には他の加盟国の承認が必要なので、紆余曲折があるかもしれないが、いずれにせよ、日本としては2018年から一貫して英国の加盟を支持している。今回の共同プレスステートメントも「英国は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定への関心を改めて表明した。日本は英国の関心を歓迎するとともに、この文脈において英国を支援する旨再確認した」としている。なお、英国は、米国、ニュージーランド、豪州との貿易協定も求めている。
英国のインド太平洋へのコミットメントは、経済分野以上に、安全保障の分野で大きな進展が見られる。日本や豪州との安全保障協力を強化し、フランスなどと「航行の自由作戦」を実施したりもしている。2018年以来、北東アジアに英海軍艦船6隻が派遣されているという。さらに、空母を太平洋に派遣する構想も持っているらしい。
英国がインド太平洋における軍事的プレゼンスを高めているのは、海洋通商国家として、航行の自由という国際的ルールを守ることが死活的に重要であるからである。共同プレスステートメントには、「南シナ海及び東シナ海における状況について懸念を表明するとともに、現状を変更し、緊張を高めようとするあらゆる一方的な行動に対し強く反対した。我々はまた、南シナ海行動規範(COC)が1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)に反映された国際法に整合し、航行の自由及び上空飛行の自由を確保し、かつ南シナ海を活用するステークホルダーの権利及び利益を害さないことの重要性を強調した」とある。
もう一つの背景としては、この地域には英連邦の国々が多く存在するので、これらとのつながりを強化しておきたいとの英国の意図が考えられる。
EUを離脱した英国は、グローバル・ブリテンを掲げるが、多くの困難に直面しよう。そうした中で、英国のインド太平洋へのコミットメントの強化は、日本が掲げるインド太平洋構想にとっても心強く、日英双方の利益になる。その進展ぶりから目が離せない。
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