2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2020年3月28日

「便利で安価な暮らし」の犠牲になる外国人

 留学生の存在がなければ、コンビニ弁当の価格は確実に値上がりするだろう。宅配便の「翌日配送」「送料無料」といったサービスにも影響が出るかもしれない。とはいえ、日本が「成り立たない」わけではない。私たちが当たり前のように享受している「便利で安価な暮らし」が維持できないだけだ。

 新聞配達現場で留学生が強いられる違法就労や未払い残業の問題にしろ、新聞社が夕刊を廃止さえすれば解決する。だが、新聞社は「ご都合主義」によって、そして留学生を雇う企業は「便利で安価な暮らし」を求める私たちの欲求に応えるため、弱い立場の外国人に犠牲を強いている。

 私は何も外国人労働者の受け入れを頭ごなしに否定しているわけではない。農業などのように、外国人の助けが必要な分野もある。ただ、「人手不足」なのだからと、日本人の嫌がる底辺労働を何から何まで外国人に担わせ、「便利で安価な暮らし」を維持しようとすることの是非を問うている。

 2008年秋にリーマン・ショックが起きた際、日本の景気は大きく悪化した。そのとき、真っ先に仕事を失ったのが外国人だった。30万人以上に上った日系ブラジル人などが「派遣切り」の対象となったのだ。すると政府は日系人を対象に「帰国支援金」の制度を設け、母国への帰国を促した。外国人を「使い捨てた」と海外から批判を浴びた制度である。

 今回のコロナ禍の影響は、リーマン・ショックを超える可能性が高い。すでに製造業の一部では、外国人の派遣労働者が解雇され始めている。感染拡大を理由に、受け入れた実習生を退職させようとした企業もある。

 不測の事態が起きると、外国人は雇用の調整弁となりやすい。コロナ禍の行方次第では、実習生や留学生にもしわ寄せが及ぶことだろう。また、感染が日本で拡大すれば、逆に彼らの方から母国へ帰国する動きが広がるかもしれない。

 低賃金・重労働を担ってくれる外国人は、日本にとっては実に都合がよい存在だ。ただし、外国人頼みには危うさが伴う。冒頭で紹介した新聞販売所と外国人の関係を見てもそうである。

 外国人に頼るべき仕事とは何なのか。頼るとすれば、どれほどの労働者を日本へ受け入れ、いかなる役割を果たしてもらうべきなのか。企業の生産やサービス体制、そして私たちの暮らし自体にも、見直すべき点はないのかどうか。そんな根本的な議論が、コロナ禍によって起きることを願いたい。

  
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