その点で指導部は、新型コロナ対応を「人類運命共同体」を定着させる好機とも捉えている。そこで、四川省がイタリアを、広東省がイラクを、江蘇省がパキスタンを、上海がイランを医療支援するなど「一省救一国」の支援体制を講じている。また、習近平がフランスのマクロン大統領などと首脳外交を展開し、相手国への公衆衛生分野での協力や、世界的な公衆衛生上の貢献を行うことを申し出ている。
3月28日にテレビ電話会議の形式で開催されたG20特別サミットでも、習は感染症対策の国際的な団結の必要性を訴えるとともに、G20がその行動計画を取りまとめるよう提案した。そして、「人類運命共同体」という言葉とともに、各国と感染抑制の有益な方法を共有し、治療薬とワクチンの共同研究開発を進め、感染の拡散が見られる国に対し、できる限りの援助を行う用意があることを訴えた。
こうした中国の国際的な危機を克服するための貢献を積極的に評価するべきだ。しかし、同時にそれは危機をいち早く克服した中国が、国際的な支援を先導する姿を可視化することによって、発展途上国を中心とした国際世論に対して、一党支配という統治モデルの説得力の強化にも利用していることを理解しておかなければならない。中国外交はますますしたたかさを増している。
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■新型コロナの教訓 次なる強敵「疾病X」に備える
Part 1 「コロナ後」の世界秩序 加速するリベラルの後退
Part 2 生かされなかった教訓 危機対応の拙さは必然だった
Interview 「疾病X」に備えた日本版CDCの創設を急げ
Interview 外出禁止令は現行法では困難 最後の切り札は「公共の福祉」
Part 3 危機において試されるリーダーの「決断力」と「発信力」
Chronology 繰り返し人類を襲った感染症の歴史
Column1 世界のリーダーはどう危機を発信したか?
Part 4 オンライン診療は普及するのか 遅きに失した規制緩和
Column2 露呈したBCPの弱点 長期化リスクへの対策は?
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