世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年7月24日

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 7月1日、ロシアでは、新型コロナウイルスのパンデミックの中、プーチンが現在の任期が終わる2024年から後12年、2036年まで大統領になりうる改憲案についての全国投票がおこなわれた 。中央選挙管理委員会が7月2日発表した開票結果(開票率100%)によると、賛成は77.9%、反対は21.2%、投票率は選管当局者によると65%であった。高い投票率だったと言える。政治的には投票率が50%を超えることが望まれていたが、投票率を上げるために多くの地方で各住宅に投票箱をもって行き、投票をしてもらったケースも多くあったようで、棄権はしにくかったこともあったようである。

Anton_Sokolov/iStock / Getty Images Plus

 この全国投票は「プーチンの、プーチンによる、プーチンのための全国投票」というのが適切である。プーチンの人気は経済の不調、コロナウイルスによる打撃などで低下してきている。7月1日に全国投票をしたのはそのことも考量したからであろう。(もともとは4月22日の予定であった。)

 プーチンはこの改憲で2036年まで大統領を務めることが法的には可能になったが、それでロシアに明るい未来が開かれたとは言えない。ブレジネフ時代は、ゴルバチョフのころ「停滞の時代」と呼ばれていたが、高齢化した指導者の長期政権の下、改革は進まず、それがゴルバチョフ登場の遠因にもなった。そのようなプロセスがまた始まっているように見える。プーチンは利益の分配などで仲間を増やし、政権維持には秀でているが、その利益の分配の網の目に捕らえられて、大胆な経済改革は難しいと思われる。プーチンのもと、ロシア経済は衰退してきた。今はロシアのGDPは韓国並みであるが、石油価格が下落傾向にあり、今後ますます衰退していくだろう。

 今回の改憲で、大統領であった人は退任後も終身上院議員になり、不逮捕特権を持つことになった。エリツィンはプーチンを後継者に指名したが、その大きな理由は退任後にエリツィンとその親族を訴追しないことをプーチンが約束したこととされているが、プーチンは今回の改憲でそのことを確保している。プーチンはエリツィンへの約束は守った。

 今回の改憲では国際的な面で大きな影響を与える条項も含まれている。領土の割譲禁止条項と国際法に対する憲法の優位の条項である。

 割譲禁止については、日ソ共同宣言にあたえる影響についてのロシア側に問いただすべきであろう。日ソ共同宣言の歯舞、色丹返還約束を反故にするというのであれば、国交正常化の前提が崩れることになる。日ソ交渉は続けるということを確認させる以上のことが必要だろう。

 この条項は、クリミアにも適用があり、クリミアの併合を撤回する気はないことを示す。ウクライナ、欧米との関係を話し合い不可能なものにし、ロシアは国際的孤立の道を進んでいくことになろう。国際法違法行為でクリミアを併合し、それを憲法で固定するなど、香港国家安全法と同じような暴挙である。

 中ロの国際法違反を見ていると、今の国連安保理の常任理事会の構成は時代遅れであるように思われる。フランクリン・ローズベルトの意図は戦後の秩序を「4人の警察官」(米英ソ中。仏が後で加わる)で守ろうということであったが、中ロは警察官より泥棒に近い。

  
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