世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年7月29日

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 6月13日、ポンペオ米国務長官は、「南シナ海における海洋権益主張に関する米国の立場」と題するブレス声明を発表した。中国の南シナ海での一方的な活動で困っているフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア及びブルネイ等ASEAN諸国とともに米国が同じ立場にあることを表明したものである。その要点を紹介する。
(参考:https://www.state.gov/u-s-position-on-maritime-claims-in-the-south-china-sea/)

SOPA Images / 寄稿者 / LightRocket

・中国がフィリピンに対し、スカボロー環礁及びスプラトリー諸島に関する排他的経済
 水域(以下EEZ)を含む海洋権益の主張を行うことは法的に許されない。これらの地
 域は、国際仲裁裁判所によって、フィリピンのEEZないし大陸棚と認められたもので
 ある。この海域でのフィリピンの漁船に対する中国の嫌がらせや中国の一方的な資源
 開発は違法である。国際仲裁裁判所の判決によれば、ミスチーフ環礁やセカンド・ト
 ーマス礁はフィリピンの主権及び管轄権の下にあり、中国の法的領有権も海洋権益も
 ない。

・従って、米国は、スプラトリー諸島の中国が主張する12海里の領海を認めない。同様
 に、米国は、中国が主張するベトナム沖のヴァンガード・バンク、マレイシア沖の
 ルコニア環礁、ブルネイのEEZ及びインドネシア沖のナツナ諸島の海洋権益を認めな
 い。中国による他国の漁業活動への嫌がらせや炭化水素開発等は違法である。

・マレーシアから50海里にすぎず中国から1000海里以上あるジェームス環礁に対する領
 有権またはそれに由来する海洋権益への適法な請求権を中国は有していない。中国のプ
 ロパガンダでは、ジェームス環礁が「最南端の領土」として出てくる。が、国際法は明
 確である。ジェームス環礁は、水面下約20メートルに位置するが、ここはいかなる国も
 海洋主張できないと国際法は定める。

 7月13日のポンぺオ国務長官の南シナ海に関する声明は極めて重要な意味を持つものである。国連海洋法条約に認められている権利を超えた中国の権利主張を包括的に否定したものであって、南シナ海問題に対する極めて適切な声明である。

 中国は猛反対をしているが、南シナ海ほぼ全域が中国が主権を有する地域であるかのような主張、いわゆる9段線の主張などは荒唐無稽と言わざるを得ず、こういう主張は厳しく反論すべきものである。中国外務省の報道官は「国際法上、中国の主張が正しい」と述べているが、単にそう述べたと言うだけで、それを立証することを何一つ言っていない。

 正当な主張はまず打ち出していくことが大切である。日本もポンぺオ声明を歓迎する声明でも出せばよい。

 1984年の中英共同声明を簡単に破るような中国を牽制していく必要がある。ヒトラーが1936年、非武装地帯とされていたラインラントに進駐した時に、米英仏が強硬に対応したら、ヒトラーがその後に起こったようなことを起こしたのかという歴史のIFを考えることがあるが、とんでもない主張に対しては時宜を得て、反対しておくことが大事であると思っている。

 南シナ海問題はまさにそういう問題である。中国に国際法違反、約束違反の代償を払わせる姿勢が今後の平和につながる。

  
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