2024年7月16日(火)

WEDGE REPORT

2020年8月13日

副大統領就任の瞬間から大統領の座を狙う

 この他の選択要因としては、ハリス氏がバイデン氏と同様、中道穏健派に属していること、上院議員としての経験があり、検事出身とあって弁舌が切れることなどが挙げられる。しかし、「あまりに野心的だ」(同)という懸念も強い。副大統領は「目立たないことが最大の仕事」(専門家)といわれるほどだが、ハリス氏に、自分を殺すことができるのかどうか。

 同氏はバイデン氏同様、大統領候補指名争いに参加したが、その際のディベート(候補者討論会)で、バイデン氏の上院議員時代の人種差別に関する言動を厳しく攻撃した。ハリス氏はその後、指名争いから撤退し、バイデン氏支持に。バイデン氏は攻撃されたことを「恨みには思っていない」と述べているが、「彼女は副大統領に就任した瞬間から大統領の座を狙う」と警戒する声もある。

 もう1つの不安材料はハリス氏が副大統領候補に選ばれたことで、左派や若者が〝バイデン離れ〟を起こす恐れがある点だ。左派や若者はバイデン氏と最後まで指名争いを戦ったサンダース上院議員を支持しており、彼らの主張をいかに政策に取り入れることができるかが、支持拡大のカギになる。

検事から政界入り

 ハリス氏はいわゆる奴隷の子孫ではない。父親はジャマイカからの、母親はインドからの移民だ。全米屈指の名門黒人大学ハワード大学からカリフォルニア大学ヘイスティング法学院へ進み、司法試験に合格。2003年にサンフランシスコの地方検事に当選し、2011年にカリフォルニア州司法長官に就任した。

 2017年に上院議員に当選して念願の中央政界入りを果たした。バイデン氏の亡くなった息子ボー氏がデラウエア州の司法長官だった関係もあり、バイデン家とは付き合いがあった。子連れの男性と結婚し、2児の母親でもある。長年、警察に近い検事の職にあったため、黒人が要求する警察改革には慎重だと指摘する向きもある。

 同氏の地元のカリフォルニア州は強固な民主党の地盤であるため、同氏を選ぶメリットが薄いとの見方も出ている。バイデン氏はこうした懸念を一掃するためにも、ハリス氏とのチケットで17日からウィスコンシン州ミルウォーキーで始まる党大会を機に、選挙運動を一気に盛り上げたい考えだ。

 だが、コロナウイルスの感染拡大で大会は事実上「オンライン開催」となるため、どの程度運動に勢いがつくのかは不明だ。大会では、ミシェル・オバマ前大統領夫人、クリントン元大統領、オバマ前大統領らが演説、最終日の20日、バイデン氏が大統領候補指名受諾演説を行い、締めくくる予定。

  
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