2024年4月27日(土)

World Energy Watch

2020年8月18日

欧州とは大きく異なる日本の事情

 欧州の西側諸国での石炭火力発電所の状況は英国とほぼ同じだ。国内炭生産がなくなったこともあり、老朽化し経済性がなくなった石炭火力の閉鎖を進めているだけのようにも見える。温暖化対策とされているが、閉鎖の前提は経済性にあるようだ。大規模褐炭炭鉱を依然抱えるドイツだけは、石炭火力閉鎖を2038年に設定している。雇用、エネルギー安全保障、経済性の問題から直ぐに石炭火力を閉鎖できないということだ。

 日本の石炭火力発電所は、欧州とは異なり、北海道の内陸部にある2基を除き輸入炭専用に大型船を受け入れるため海岸線に建設されている。オイルショック以降に建設されたので、1980年代以降の設備ばかりだ。60年代、70年代に国内の炭鉱からの石炭を燃焼させるために建設された欧州の発電所とは年代も燃焼効率も異なる。

 欧州内は英国を含め送電線が連携し、パイプラインも繋がっている。安全保障上の問題は日本との比較では少ないが、それでもドイツは電気料金の急上昇を避け、特定の国への依存度を上昇させないように、徐々に脱石炭を進めている。温暖化対策は重要なテーマの一つには違いないが、電気料金の上昇を招き、安全保障上問題を生じる可能性があるならば、慎重に進める必要がある。

 ドイツは石炭火力発電所の閉鎖に際し電力会社に補償を行う。市場原理を離れ政策により閉鎖を要求するならば当然必要な措置だ。日本でも市場の力でなく石炭火力を閉鎖するならば、税金を利用することが必要になるだろう。年収が伸びず、生活が苦しいという世帯が6割近い国であれば、政策の費用対効果と優先課題を常に考える必要ある。

  
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