世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年9月14日

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 東地中海で、ギリシャおよびその友好国とトルコとが、ガス田をめぐって対立を強めている。ギリシャとトルコはともにNATO加盟国である。

Alberto Masnovo / sldesign78 / iStock / Getty Images Plus

 東地中海では2010年ごろから大規模なガス田が次々に発見されたが、その価値は7000億ドル相当と言われる。開発はイスラエルが先鞭をつけ、エジプトやギリシャなどが続いた。今はギリシャ、キプロス、イスラエル、エジプト、イタリア、ヨルダン、それにパレスチナが協力して開発している。

 トルコは、ギリシャの領有権主張や、エルドアン大統領の攻撃的振る舞いが原因で合同開発から外された。そこでトルコは2019年11月リビアの暫定政府とEEZの境界を確定する合意を結んだ。この合意により東地中海でトルコとリビアのEEZが接することとなり、イスラエルやギリシャなどが天然ガスを欧州に輸出する障害になりかねない。次に、トルコはキプロスのEEZ内で天然ガスの試掘を始めた。トルコはキプロスを国家として承認しておらず、したがって、キプロスのEEZも認めないという立場である。これにギリシャ他の国々が反発したのは当然である。

 問題はトルコとギリシャ他の対立が軍事的側面を持っていることである。トルコはキプロスのEEZ内での試掘をするに際し、海軍の軍艦5隻をエスコートにつけた。これに対しギリシャも軍艦を派遣したほかに、フランスがギリシャを支援するとして戦闘機2機と軍艦2隻を派遣した。8月12日にはギリシャの軍艦とトルコの軍艦が衝突一歩手前までいったとのことである。状況の詳細は定かではないが、東地中海が一触即発の状態にあり、ドイツのマース外相が「わずかな火花でも惨事を招きかねない」と危機感をあらわにしたのも無理はない。

 危機の火消しのため、ドイツが仲介に乗り出している。ドイツは現在、欧州理事会の輪番議長国であり、EUが東地中海情勢に関心を持っている以上、ドイツが乗り出したのは当然と言えるが、ドイツが仲介の役を買って出たのはそれだけではなさそうである。トルコにはシリア難民が350万人いると推定されており、その多くは機会があれば欧州、できればドイツに行きたいと思っている。2016年にEU・トルコ間で協定が結ばれ、トルコがシリア難民のEUへの流出を阻止することで合意がなされたが、本年3月トルコがシリア情勢に対するEUの立場に不満を抱き、シリア難民のEU(ギリシャ)への流出を容認した経緯がある。メルケル首相が、エルドアンが再びシリア難民のEUへの流出を認めることは避けたいと考えていても不思議ではなく、今回ドイツが仲介を買って出た背景にはこのような事情があったものと考えられる。

  
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