2024年4月25日(木)

赤坂英一の野球丸

2020年11月18日

心強い人物が参謀として復帰

 一方で、一軍には心強い人物が参謀として復帰する。外野守備走塁コーチ兼三塁コーチとして、2016、17年の2連覇に貢献した河田雄祐(52)だ。18年から今年までコーチを務めたヤクルトを退団し、ヘッドコーチ格で3年ぶりに古巣に戻ることになった。

 河田コーチが在籍していた2年間、広島は「逆転のカープ」と呼ばれたように、前半でリードを許しながら、後半に引っ繰り返すのを勝ちパターンにしていた。その最大の原動力となったのはもちろんリーグ一の打線だが、それとともに足を使って相手バッテリーを揺さぶり、プレッシャーを与えていたことを見逃してはならない。

 当時、河田はよくこう強調していた。

 「僕が選手としてプレーしていたころ(1986~95年)のカープのように、とにかく積極的に走る野球を取り戻したい。(三塁コーチとして)何でもかんでもゴー! とは言わないが、ランナー三塁で(打者が)内野ゴロだったら、少々際どいタイミングでも突っ込ませます。カープは何をやってくるかわからないと、敵にそう思わせたいですからね」

 そう意気込んだ河田がコーチに就任して25年ぶりに優勝した16年、チーム盗塁数が前年リーグ4位だった80個から、リーグ1位で唯一の3ケタに乗せる118個へと飛躍的にアップ。2連覇した17年も112個で2年連続リーグ1位と唯一の3ケタをキープ。あの2連覇は、河田が積極的な走塁を推進した成果でもあったのだ。

 しかし、河田がヤクルトに去ると、チーム盗塁数も18年95個(リーグ1位)、19年81個(同3位)、20年64個(同4位)と年を追って減少。19年からは優勝争いに絡めず、2年連続Bクラスと低迷していることは先に書いた通りである。

 河田はまた、いまのカープにとって得難いムードメーカーになるだろう。彼がコーチを務めていたころのカープは、試合前練習の時間から、若手にゲキを飛ばす声がグラウンドに響き渡っていた。

 まだ4番に定着する前の鈴木、控えでくすぶっている野間峻祥(27)にノックしながら、「前へ出ろ、前へ!」「怖がるな、怖がるな!」「(打球を)後ろに逸らしてもいいから思い切って突っ込め!」と声を嗄らしていたものだ。16年にはCS(クライマックスシリーズ)直前の決起集会でサザンオールスターズの『涙のキッス』を熱唱し、鈴木と野間がその背後でバックダンサーをやったこともある。選手と一緒にここまで盛り上がれるコーチはなかなかいない。

 河田が戻ってくれば、最近調子を落としている野間も復活するのではないか。3連覇中にレギュラーをつかみかけながら、そこで壁にぶつかり、19年には緒方孝市前監督(51)に行き過ぎた体罰も受けて低迷。。今季は70試合出場に終わり、後輩の台頭もあって尻に火がついている。

 しかし、河田は以前から、野間の足の速さと外野の守備力を高く評価していた。実際、こう話していたこともある。

 「守備力だけなら(鈴木)誠也よりも野間のほうが上ですよ。足はプロに入ってから速くなったし、守備範囲も広い。彼をセンターに固定できれば理想的なんですけどね」

 佐々岡監督の同期生だった水本二軍監督が去ったあと、河田ヘッドコーチがどのようにカープを建て直していくのか。地味なようでいて、なかなか興味深い見どころだ。

参考資料
○月刊PHP:2018年5月号【ヒューマン・ドキュメント】
『下積みが生んだ〝実績〟~無名の二軍監督が日本一に!~プロ野球広島東洋カープ・二軍監督 水本勝己さん』(取材・文 赤坂英一)
○WEDGE Infinity【赤坂英一の野球丸】
2017年9月13日配信『カープ優勝を支える2人の〝鬼〟』
同年9月14日配信『カープ選手の足が速くなったワケ』
同年10月11日配信『カープ石井、河田コーチ退団に思う』
○東スポWeb【赤ペン!!】
2016年2月24日配信『河田コーチが赤ヘル機動力野球復活宣言「カープは何をやってくるかわからないと思わせたい」』
同年10月29日配信『今回の日本シリーズで一番トクをしたのは河田コーチ』
同年11月30日配信『広島の結束力は凄い!〝河田佳祐オンステージ〟with誠也&野間』

  
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