同国の感染症情報センター(RENAVE)が発表した年齢別コロナ感染者グラフによると、5月10日までは、70歳以上が全体の約37%を占め、15~39歳までは約15%の感染に過ぎなかった。しかし、それ以降は、前者が約11%で、後者が約38%と逆転している。死亡者の割合にも大きな変化が見られる。5月10日まで、70歳以上が全体の36.4%を占めていたが、現在は12.3%と3分の1まで減少した。
コロナ陽性者が急増し、各国政府は防止策としてロックダウンを行い、メディアは危機的状況を伝え続ける。だが、医療従事者側からは、これらとは違ったトーンの声もささやかれる。
スペインの集中治療・危篤・冠状動脈医学会のリカール・フェレール会長は、10月21日付の主要紙エル・パイスで「基礎疾患を持つ患者の特徴を把握した上で、それぞれに対症療法を行っている」と語った。薬の使い分けで、第一波ほどの緊急事態に陥らないとの考えを示した。
バルセロナにあるバイデブロン病院のマリアホセ・アバディアス医師は「患者は急増している」と述べる一方、第一波の緊急時はICUに220人入院したが、現在は27人で「7月から安定している。3分の2は入院させない。逼迫も医療崩壊もしていない」と地元紙エル・ペリオディコ(10月24日付)に説明した。
浮き彫りになった
各国の政治の弱点
若者の行動以外にも、欧州でコロナ感染拡大を防げないもうひとつの問題がある。ウイルスのような「見えない敵」に対し、各国の政治システムの弱点が浮き彫りになったのだ。
例えば、スペインは自治州制度で、地方分権型のため、中央政府と地方政府の間に政治思想の食い違いがあると機能しにくい。政権トップは社会労働党のサンチェス首相だが、マドリード州は国民党のアジュソ州首相が指揮を執る。前者は「人命」を優先し、後者は「経済」を優先する。国の首相が科学的根拠に基づいて勧告した「ロックダウン」に対しても、同州首相は一向に耳を傾けず、マドリードだけ例外の措置を続けている。
1日5万人を超える感染者を出したフランスは、中央集権型のため、第一波から現在まで、マクロン大統領がワンマンでこのパンデミックに対処してきた。仏ル・モンド紙の社説では、ドイツの地方分権システムと対比し「ドイツ政治は合意を促し、フランス政治は対立を煽る」と書かれ、フランスの中央集権型はコロナ対策には非効率的であるとの見方が記された。
イタリアのコンテ首相は10月26日、午後6時以降の飲食店の営業停止を決定。ローマやミラノでは、関係者の一部が暴動を起こす事態へと発展した。パビア大学のフラビオ・キアポーニ政治学教授は「成熟した政治文化が国民の行動を決定する」と主張。しかし「国民が正しいと思って(自由や権利のために)行動しても、法を無視してしまえば、たとえ政府が力を入れてコロナ対策を行っても効果は表れない」と語り、政府と国民の間に協調性がない現状を嘆いた。