WEDGE REPORT

2020年11月23日

»著者プロフィール
閉じる

宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

 米ハーバード、スタンフォード、英オックスフォード3大学の科学者らは10月4日、「グレート・バリントン宣言」を発表し、医療関係者ら4万4000人(10月29日現在)が署名した。これは、ロックダウンにより、医療者の負担や雇用・教育の問題が増加する社会環境の中で、高齢者や社会的弱者を保護しながら若者の社会活動を復活させ、集団免疫を目指そうとする宣言だ。

 医師や科学者の多くは、この宣言に対して慎重であり、集団免疫が成立するかどうかも見解が分かれるところだ。ただ、欧州の第一波でコロナ大量死が発生した背景のひとつに、高齢者の介護施設問題があった。医療でなく政治判断のミスで、病院搬送も治療も受けられず、スペインでは2万人、フランスでは1万人以上が犠牲となった。高齢者の感染者数を抑え、ひいては死者数を抑えることは重要だろう。

欧州と日本の対策は
なぜ違うのか

 欧州から見て日本の対策はどうか。

 麻生太郎副総理兼財務相は6月、「(諸外国とは)国民の民度のレベルが違う」と発言し、物議を醸した。「民度」という表現は国家主義的なニュアンスを持つが、コロナ禍では「真実の側面がある」と指摘するのはドイツ在住哲学者のハン・ビョンチョル氏。同氏はエル・パイス紙(10月25日付)への寄稿文でこう述べている。「パンデミックで欧米の自由主義が証明したことは、むしろ弱さだった。自由主義は公民精神の衰退を促している」。

 スペインのカルロス3世大学保健研究所の免疫学者フェルナンド・ガルシア氏は、日本のコロナ死亡率が低い理由として、民族の違いやBCG説も考えられるとしながらも「なによりも民度の高さだ」と主張。「約束を守る日本人には、欧米のような外出禁止令は必要ない。ルール違反が当たり前の欧米では、ロックダウンと罰金制は仕方ない措置なのだ」と語った。

 欧州では、若者のパーティは制御できず、コロナ禍でも医師が一斉ストライキをし、休業や失業に追い込まれた人々は街中で密になってデモや暴動を繰り返す。「厳しいルールに従うアジア人のほうが、矛盾のようだが自由である」とビョンチョル氏は考える。

 海外の感染爆発を受け、日本が現時点で同様の対策を講じる必要はない。気を緩めてはならないが、欧州の中でも生活様式や行動は違い、日本と比較して感染状況を示す数値にも大差がある。欧米と日本とでは多くの点が異なることを認識した上で、日本に住む人々はこれまで通りの感染対策を行い、過剰な恐怖心を抱かずにコロナと付き合っていけば良いだろう。

Wedge12月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■脱炭素とエネルギー  日本の突破口を示そう
PART 1       パリ協定を理解し脱炭素社会へのイノベーションを起こそう          
DATA            データから読み解く資源小国・日本のエネルギー事情        
PART 2         電力自由化という美名の陰で高まる“安定供給リスク”         
PART 3         温暖化やコロナで広がる懐疑論  深まる溝を埋めるには 
PART 4       数値目標至上主義をやめ独・英の試行錯誤を謙虚に学べ   
COLUMN       進まぬ日本の地熱発電 〝根詰まり〟解消への道筋は   
INTERVIEW  小説『マグマ』の著者が語る 「地熱」に食らいつく危機感をもて  
INTERVIEW  地熱発電分野のブレークスルー  日本でEGS技術の確立を 
PART 5         電力だけでは実現しない  脱炭素社会に必要な三つの視点  
PART 6       「脱炭素」へのたしかな道  再エネと原子力は〝共存共栄〟できる         

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2020年12月号より

 

 

 

 

 

関連記事

新着記事

»もっと見る