米ハーバード、スタンフォード、英オックスフォード3大学の科学者らは10月4日、「グレート・バリントン宣言」を発表し、医療関係者ら4万4000人(10月29日現在)が署名した。これは、ロックダウンにより、医療者の負担や雇用・教育の問題が増加する社会環境の中で、高齢者や社会的弱者を保護しながら若者の社会活動を復活させ、集団免疫を目指そうとする宣言だ。
医師や科学者の多くは、この宣言に対して慎重であり、集団免疫が成立するかどうかも見解が分かれるところだ。ただ、欧州の第一波でコロナ大量死が発生した背景のひとつに、高齢者の介護施設問題があった。医療でなく政治判断のミスで、病院搬送も治療も受けられず、スペインでは2万人、フランスでは1万人以上が犠牲となった。高齢者の感染者数を抑え、ひいては死者数を抑えることは重要だろう。
欧州と日本の対策は
なぜ違うのか
欧州から見て日本の対策はどうか。
麻生太郎副総理兼財務相は6月、「(諸外国とは)国民の民度のレベルが違う」と発言し、物議を醸した。「民度」という表現は国家主義的なニュアンスを持つが、コロナ禍では「真実の側面がある」と指摘するのはドイツ在住哲学者のハン・ビョンチョル氏。同氏はエル・パイス紙(10月25日付)への寄稿文でこう述べている。「パンデミックで欧米の自由主義が証明したことは、むしろ弱さだった。自由主義は公民精神の衰退を促している」。
スペインのカルロス3世大学保健研究所の免疫学者フェルナンド・ガルシア氏は、日本のコロナ死亡率が低い理由として、民族の違いやBCG説も考えられるとしながらも「なによりも民度の高さだ」と主張。「約束を守る日本人には、欧米のような外出禁止令は必要ない。ルール違反が当たり前の欧米では、ロックダウンと罰金制は仕方ない措置なのだ」と語った。
欧州では、若者のパーティは制御できず、コロナ禍でも医師が一斉ストライキをし、休業や失業に追い込まれた人々は街中で密になってデモや暴動を繰り返す。「厳しいルールに従うアジア人のほうが、矛盾のようだが自由である」とビョンチョル氏は考える。
海外の感染爆発を受け、日本が現時点で同様の対策を講じる必要はない。気を緩めてはならないが、欧州の中でも生活様式や行動は違い、日本と比較して感染状況を示す数値にも大差がある。欧米と日本とでは多くの点が異なることを認識した上で、日本に住む人々はこれまで通りの感染対策を行い、過剰な恐怖心を抱かずにコロナと付き合っていけば良いだろう。
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