世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年3月9日

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 ポーランドでは、昨年7月に与党「法と正義」(PiS)が大統領選で辛勝して以来、多元主義への弾圧が加速し、言論の自由と自由なメディアに対する圧力がますます強まっている。

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 昨年12月には、ハンガリーの権威主義の政権がやっているモデルに倣って、国営石油会社が数多くの新聞や雑誌をドイツの所有者から買収した。具体的には、国営石油企業PKN Orlen(国が27.5%を所有)が20の地方紙と120の地方の週刊紙を有するPolska Pressをドイツのメディア・グループVerlagsgruppe Passauから買収した。PKN Orlenはこの買収はビジネスの観点での判断であり、AMAZONがワシントン・ポストを買収したのと同じようなものだと言っているが、当然のことながらAMAZONは国営企業ではない。傀儡を使って独立メディアを政府のプロパガンダ機関に衣替えするハンガリーの手法に倣ったものである。外国系メディアのポーランド化はかねてPiSの目標であるが、これはその一つでもある。

 続いて、今年の2月始めにポーランド政府は、メディアの広告収入に2%ないし15%の新たな税を課す法案を提案した。彼らはこれを「solidarity tax(団結税)」と呼んでいるようで、税収のうち50%はパンデミックへの対処を含め医療に、35%は「メディアにおける文化と国家遺産」を支援するための新たな政府の基金に振り向けられると説明している。しかし、本当の狙いが独立のメディアを弱体化させ、あるいは破綻させることにあることに疑いはない。国営メディアも同様に対象になると政府は言うが、政府資金の補助がある訳で同列には論じ得ないだろう。

 この法案には、野党はもとより反対であるが、連立与党の小政党「合意」がこのままでは支持出来ないとしている。政府は法案を修正する意向を表明しているが、どうなるのか分からない。課税対象となる広告収入の水準や税率の見直しにとどまるのかも知れない。対象となるメディアを巨大IT企業に限る方向に転換するかも知れないことも政府筋は言っているが、はっきりしない。

 トランプ政権における米国とポーランドとの関係には異様なものがあった。トランプはPiSを好み、ワルシャワを訪問してPiSのナショナリズムを是認するなどしていた。ポーランドにおける言論の自由の弾圧は、バイデン政権にとっての問題でもある。2月19日、ミュンヘン安全保障会議で演説したバイデンは「欧州と米国を含む多くの場所で民主主義の進展が攻撃に会っている」「(民主主義を)守り、戦い、強化し、新しくする必要がある」と述べたのだから、ポーランドの現状に目をつぶる訳にはいかないであろう。

  
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