韓国の「読み方」

2021年3月24日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

米国と韓国の外務・防衛担当閣僚協議(代表撮影/ロイター/アフロ)

 米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官が日本と韓国を訪問し、それぞれとの外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)に臨んだ。中国の人権問題や北朝鮮の核開発問題への対応で日韓の温度差が目立つ結果となったが、米国は一貫して日米韓連携の重要性を強調した。ブリンケン氏が韓国メディアとのインタビューで慰安婦問題について語った言葉からは、日韓対立の中で微妙なバランスを取ろうとする姿勢がうかがえた。

「甚だしい人権侵害」と断じつつ…

 ブリンケン氏は日韓でそれぞれテレビ局2社ずつのインタビューに応じた。日本はテレビ朝日と日本テレビ、韓国は公営放送KBSと民放SBSである。

 韓国の2局は慰安婦問題に関する質問をぶつけた。ブリンケン氏は、日韓慰安婦合意のあった2015年にオバマ政権の国務副長官だった。日韓対立に業を煮やしたオバマ政権が合意を後押ししたのは周知の事実なので、現状をどう見ているか聞くのは自然なことだろう。

 ブリンケン氏はKBSのインタビューで、慰安婦問題について「第2次大戦中の日本軍によるものを含め、女性に対する性的搾取は甚だしい人権侵害だ」と語った。

 韓国側の立場に配慮し、日本には厳しい態度だ。他のイシューで韓国が押し込まれたという印象があるからでもあろう。文在寅政権に好意的な韓国メディアでは、この発言が一定の注目を集めた。

 ただ、私が確認した当日夜のKBSニュースではここまでしか放送されなかったのだが、ブリンケン氏の話には続きがある。国務省が公表した発言録によると、ブリンケン氏は「私たちは、過去に関する難しい諸問題があることを知っている。私たちは、それに取り組むよう(日本と韓国の)友人たちを後押しし、(日韓の取り組みを)期待している。この問題については、過去に重要な進展が確かにあった。私は、これからもそうなることを願っている」と続けた。「重要な進展」は、オバマ政権が高く評価した慰安婦合意のことだろう。

 ブリンケン氏はさらに自らの経験として、日米韓が協力すれば北朝鮮問題だけでなく、パンデミックや気候変動を含む多くの問題で有益な変化をもたらすことができると指摘した。

 SBSとのインタビューでは、日韓が「和解の精神」を持って解決に当たる必要性を指摘した。日本テレビでは、米国が日韓関係の仲裁に乗り出すかと聞かれた。これには直接答えずに、歴史問題があったとしても緊密な協力をすることが日韓両国の国益につながると強調した。テレビ朝日は日韓関係について聞かなかった。

 発言を通して整理すると、▽慰安婦制度は甚だしい人権侵害だ、▽日韓が「和解の精神」を持って歴史問題に取り組むことを期待している、▽「重要な進展」を再現させてほしい、▽日米韓が協力すれば多くのメリットを得られるーーということになる。政治的な解決策だったはずの慰安婦合意の現状への失望感を示唆し、日韓に新たな取り組みを期待するというところだろう。慰安婦問題が深刻な人権侵害だったという認識を表明することで、一定のバランスを取った形だ。

 韓国では最近、慰安婦が業者と高額の契約を結んでいたと主張する米ハーバード大教授の論文に批判が集まっている。KBSはこの論文についての見解も聞いたが、「その論文は知らない」と軽くあしらわれた。日韓歴訪前に韓国メディアが大々的に批判報道を展開していた問題であり、事前準備で騒ぎの概要くらいは聞いていてもおかしくないので、日韓どちらかに肩入れする姿勢になるのを嫌った可能性がありそうだ。

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