冷戦中は「敵側」として没交渉だった中国と再び向き合うようになったのも、韓国にとって大きな変化だった。特に2000年代以降、韓国経済は中国への依存度を高め、貿易額に占める中国のシェアは日米両国の合計を上回るようになった。ただし、韓国の対中配慮は経済的要因だけに起因するものではないだろう。地理的な近さだけでなく、歴史的な背景も、韓国が中国からの圧迫感を強く意識する要因になっている。中国との間に海をはさむ日本とは違うのである。
新冷戦下でも大きいメリット
そうした状況変化にもかかわらず、日米韓という枠組みは依然として有用だ。冷戦終結後に核・ミサイル開発を加速させた北朝鮮は現実的な脅威であり、日本にとって日米韓という枠組みのメリットは大きい。米国にとっても、世界有数のデジタル関連技術を持つようになった韓国の動向は中国と向き合う上で無視できない。そもそも同盟の力を結集して中国に対抗するというのが、バイデン政権の基本路線である。
韓国にとっても、本来はメリットの大きな枠組みだ。中国からの圧力を考えると日米豪印(通称クアッド)のような新たな枠組みに参加するのは難しいが、既存の枠組みの活性化なら問題は少ないはずだ。ブリンケン氏は韓国で、日米豪印という4カ国(通称クアッド)と日米韓という両方の枠組みの重要性を強調した。それは、中国や北朝鮮に対する韓国の立ち位置を理解した上で、対中政策に必要な包括的連携の強化を図ろうとするものだろう。日韓の間でバランスを取りつつ慰安婦問題の解決を促そうとするのも、同盟ネットワークを強化するためと言えそうだ。
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