2022年12月5日(月)

WEDGE REPORT

2021年4月23日

»著者プロフィール
閉じる

樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

他国なら厳しい制裁か 

 このような事件は、他国では必ずと言っていいほど強い制裁の対象となる。

 同様のサイバー攻撃についてみると、思い浮かぶのはロシアが暗躍した米大統領選だ。

 トランプ前大統領(共和党)とヒラリー・クリントン候補(民主党)が争った2016年、ロシアの情報機関に協力するハッカー集団が、クリントン候補を追い落とそうと、民主党全国委員会の情報システムに侵入。同候補にとって不利となる電子メールを流出させた。

 オバマ政権は選挙後の12月、米国内で活動するロシア情報機関員、その関係者ら35人を一挙に国外追放処分。オバマ大統領は「データを盗んで暴露する手口はロシア政府の指示以外にありえない」とロシアを強く非難した。

 大統領選挙への介入という民主主義、国家安全保障にとって、これ以上ない危険な挑戦であることを考えれば、米国が強力な制裁を発動したのは当然だった。 

 この問題では、トランプ陣営との共謀も疑われ、特別検察官が任命されて捜査が行われたが、その証拠はなかったと結論づけられた。 

 その過程で、当時のFBI(連邦捜査局)長官が解任され、トランプ氏の側近らが刑事訴追されたのは記憶に新しい。

 民主党のバイデン氏がトランプ大統領の再選を阻んだ2020年の選挙でも、ロシアは再びサイバー攻撃を仕掛け、バイデン氏に不利な情報をネット上で拡散させた。

 アメリカ政府は21年4月15日、ワシントンのロシア大使館員10人に国外退去を求め、支援したロシアIT企業など32の個人・団体について資産を凍結するなどした。 

米国以外の各国も強い姿勢

  制裁は米国の専売特許ではない。

EU(欧州連合)は2020年10月、ロシア参謀本部情報総局(GRU)のトップ2人について、EUへの渡航を禁止、資産を凍結した。

 2015年、メルケル首相の電子メールを含むドイツ連邦議会(下院)のコンピューターシステムへのサイバー攻撃を主導したというのが理由だ。

 この制裁には英国も直ちに同調した。

 サイバー攻撃ではないものの、中国も安全保障に関わる問題でアメリカの制裁を受けている。

 2021年4月、米商務省は中国でスーパーコンピュ―ター開発に関わっている7社、団体に対する禁輸措置を発表した。

 米国の技術が核など軍事関連に転用されているとして、これを防ぐのが目的だった。

 旧ソ連の衛星国、チェコも2021年4月、ロシア外交官18人の追放という思い切った手段にでた。

 2014年、チェコ東部の弾薬庫が爆破され2人が死亡した事件にロシア情報機関が関与していたことへの報復だった。

新着記事

»もっと見る