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2021年4月23日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

日本は伝統的に制裁に消極的

 少しでも国の安全保障が脅かされる事態になれば躊躇なく制裁を発動するのが各国共通の行動だが、日本はいささか慎重すぎるようだ。

 2010(平成22)年9月、尖閣付近の日本領海で、違法操業中の中国漁船が巡視船に体当たり、巡視船を破損させた事件は、多くの日本国民にとって忘れられない。

 船長が逮捕されたが、那覇地検は不起訴とし、乗組員全員おとがめなしで帰国、〝凱旋〟のような歓迎を受けた。

 中国が〝報復〟として中国国内の日本企業の社員4人を拘束、レアアースの日本向け輸出を事実上差し止めたことから、日本政府がそれに屈して釈放したーとして国内から反発、批判を招いた。

 新疆ウィグル自治区での人権侵害でも、米国、EUがそろって制裁を発動しているなか、ひとり日本だけが「懸念表明」にとどめ、強硬手段を控えている。

日本の決意が試される時だ

 日本は中国から、どの国よりもその脅威を感じていながら、隣国という地理的条件、経済の相互依存もあって強い姿勢をとることができないという苦しい事情を抱えている。

  しかし、今回サイバー攻撃の対象になったのは、いずれもわが国の安全保障の根幹を担う企業、機関だ。しかも背後に中国の人民解放軍が控えていることも判明している。

 容疑者が国外に逃亡してしまったからといって、そのままにしておくことは国益を大きく損なう。私電磁的記録不正作出などという十分な法令違反の事実があるのだから、中国に容疑者の引き渡しを求め、そのうえで外交ルートで抗議、制裁に進むべきだろう。

 政府部内には、根拠法令がないから制裁は難しいと弁明するむきもある。それならば、既存の法令内で可能な方策を探ればいいし、将来的には、この種の事件の再発に備えて、早急に法令を整備すべきだろう。

 制約があるからできないというのではなく、行動を可能にする体制を整えることが先決だろう。

 日本が何も行動をとらなければ、その悪影響は日米関係にとどまらない。 

 中国はいよいよ尖閣付近での不法行為を活発化させるてくるだろう。竹島の領有権を主張する韓国も、勢いづくかもしれない。

 日米首脳会談で謳われた対中関係での日米共同対処に、日本がどこまで本気か、試されるときが早速訪れたというべきだろう。

 日米首脳会談の直後に今回の事件が公表されたことは偶然ではなく、決意を示す日本の意欲の表れと受け止めたい。

  
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