田部康喜のTV読本

2021年5月12日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(Jeffrey Hamilton/gettyimages)

 「リコカツ」(TBS・毎週金曜よる10時)は、運命の出会いで結婚したはずだった、北川景子と永山瑛太が、離婚を決断したあとに「愛」にたどり着くことを予感させる、異色の恋愛ドラマである。

 女性誌の編集者である、水口咲(北川景子)は、後輩の友人の三本木なつみ(大野いと)と冬山に登山中に滑落して、航空自衛隊の救難団の1等空曹・緒原紘一(永山瑛太)に助けられる。

 「あなたを待っていたの」という、咲(北川)を紘一(永山)はしっかりと抱きしめる。運命の出会いと感じた咲は、紘一とたちまち結婚する。

 新婚生活が始まると、ふたりの価値観がまったく違っていることに、咲は気づくのだった。紘一は毎朝、4時には起きてジョギングにでかけ、朝食はみそ汁と焼き魚を作るようにいう。そして、咲と向かい合って床にすわり、壁に掲げた「家訓」の唱和をする。

 ふたりの価値観が違うのは、育った家庭の環境が影響している。咲の父は大手広告代理店を退職したいまも、前職の名刺を使っては女性との交際に励んでいる。母は「奇跡の美魔女・水口美土里」の著者である、人気のモデルである。家族は自由にそれぞれの人生を歩むことを原則にして、年にたった一度、母・美土里(三石琴乃)の誕生会だけは、家族がそろう。

 紘一の家族は、元自衛官で退官している・正(酒向芳)と専業主婦の母・薫(宮崎美子)とひとり息子の紘一だった。何事にも厳格な父は、「男は家庭を守り、女はそれを助ける」という考えの持ち主で、家事は一切やらない。

 咲の母・美土里(三石)も、紘一の母・薫(宮崎)もまた、「リコカツ」に向かっている。美土里は、咲と紘一が住むマンションに転がり込み、薫は箱根の高級旅館の仲居となって、働き始める。3組の「リコカツ」が絡み合って、ドラマはときに笑わせ、ときにジーンと心を揺さぶる。今シーズンのドラマの傑作である。

 第4話(5月7日)に至って、咲(北川)は女性誌の後輩から「パワハラ」の訴えを受け、会社によって、小説の出版を担当する文芸部に異動する。

 咲が最初に命じられたのは、超売れっ子の恋愛小説家の水無月連(白洲迅)の担当だった。

 水無月のオフィスにいくと、彼は次回作の構想について、咲の感想を求めるのだった。

水無月 夫婦の家に妻の元カレがやってきたら、妻は夫に怒って欲しいかな?

咲   友達の話なんですけど、妻としてはもやもやしてしまって、夫に怒って欲しいんじゃあないかと思います。

水無月 好きだから、もやもやする。旦那のこと好きなんだね(にやりと笑う)

    そのお友達。

 咲が実は最近、経験したことだったのである。紘一の母・薫(宮崎)が働いている、高級旅館に紘一とふたりで泊まりにいって、薫に家に帰るように説得するつもりだった。「夫の妻でもなくて、子ども母親でもない、自立した女の道を歩くことにしたの」といって、生き生きと働いている薫の説得には失敗する。

 自宅のマンションに帰ると、咲の元カレで弁護士の青山貴也(高橋光臣)がいるのだった。離婚を決意した咲の母の美土里(三石)が、手続きを相談するために呼んだのだった。しかも青山(高橋)は、紘一が通うジムの仲間だった。美土里が、青山が咲の元カレだったといっても、紘一は怒らなかったのである。

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