2024年12月13日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年6月1日

 ミャンマーで国軍がクーデターを起こしてから、6月1日で4か月となる。ミャンマーの現状については2つの見方がある。

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 一つは国民の抵抗で軍事政権が苦しんでいるという見方である。国軍は徹底的な弾圧を試みているが、治安部隊による拘束を避けるために短時間の抗議デモを行うなど、抵抗を続けている。この短時間のデモは、通行人に紛れていた人が治安部隊の目を盗んで瞬時に集まり、5~10分の短時間で解散するという「フラッシュモブ」型といわれるデモらしい。

 ロイターの報道は、クーデターから100日目に当たる5月11日、「抗議者たちは行進、バイクによるデモ、治安部隊を避けるための短時間の抗議に参加し、反逆を示す3本指を挙げる者もいた。何百人もがミャンマー最大の都市ヤンゴンの街頭に繰り出し、“敵の完全な排除”を求める旗を掲げた」、と描写している。

 このようなデモの他に、国鉄の労働者や公務員などによるストも行われていて、国は機能停止の危機にあるという。AP通信によれば、国鉄の労働者たちは2月の軍事クーデターに対する最初の組織的反対者の一つであり、列車が時刻通り運用されていないことは専制政治の機能不全を示している。公務員、銀行部門、保健制度、大学、学校などでも不服従が見られると報じられている。同報道は、「ミャンマーの軍事指導者たちは支配しているふりをしているだけである」とも指摘する。

 他方で、抗議者の中には、国連やASEANが何もしてくれないということに怒り、裏切り、絶望を感じ、その怒りが諦めに変わった、という見方もある。特にミャンマーも加盟しているASEANに対する不満が強いとのことである。

 そのASEANは、4月24日にASEANの事務局があるインドネシアのジャカルタで臨時首脳会議を開き、ミャンマー問題を討議した。事務局は当初軍政に対抗して樹立されたミャンマーの「国家統一政府(NUG)」の代表を呼ぶ計画であったが、ミャンマーの軍政が強く反発したため招請をあきらめ、ミャンマーからはミン・アウン・フライン国軍司令官が参加した。首脳会議の声明では、(1)暴力の停止、(2)全ての当事者による建設的な対話、(3)対話を促すためのASEANの特使の派遣、(4)援助の受け入れ、(5)特使の受け入れ―の5点に合意している。しかし、討議ではシンガポールやマレーシア、インドネシアがミャンマーの市民に対する弾圧を止めるよう要請したものの、実質的な成果は上がらなかったという。

 米国やEUなどは、ミャンマーの軍部に制裁を科し、強化している。いくつかの西側の企業はすでに投資を控えている。国際機関も、ミャンマーの軍事指導者と結びついているヤンゴンの高級オフィス街から立ち退いていると報じられる。しかし、多くの分析家たちによれば、ミャンマーの軍部は驚くほど制裁に強い。その大きな要因は、ミャンマーは1962年から2011年まで独裁政権の下で閉ざされた国であり、未だに孤立していることである。K. Oanh Ha, Khine Lin KyawとJin Wuは、5月10日付けのBloombergの記事で、「軍部はミャンマー経済の多くを支配しているので、国際的制裁は効果がない」と報告している。

 軍事政権は、海外メディアとしては初めて香港のテレビによるインタビューに応じ、その内容が5月22日に報じられた。ミン・アウン・フライン司令官は「軍の目的は、複数政党制の民主主義に基づく連邦国家の実現であり、状況が許せば1年以内、あるいは1年半以内にこれを進めていくことになる」と述べた。他方、5月21日には、ミャンマーの選挙管理委員会が、昨年11月の総選挙で違法行為があったことを理由に、アウン・サン・スー・チー率いる国民民主連盟(NLD)の解党処分を検討することを示唆している。

 軍事政権は、今後とも徹底的な弾圧を試みるであろうが、国民の側は、前述のフラッシュモブ型デモを含め抗議活動を続けるだろう。2013年のミス・ミャンマーなど、若いタレントが抗議運動に参加し熱狂的な支持を集めるという、今まで見られなかったような現象もある。ミャンマー情勢の先は見えない。

  
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