世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年6月21日

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 6月4日、日本は124万回分のアストロゼネカ製のワクチンを台湾に提供した。米国は同6日、上院議員ら3人を台湾に派遣し、ワクチン75万回分を寄贈した。

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 中国政府は。日本の台湾へのワクチン供与を「自己の政治利益のための道具」に使っているとして口汚く非難し、また、米国超党派の議員団が軍用機を使ってワクチンを台湾に運んだことを「もし台湾を中国から分裂させるなら、人民解放軍は一切の代価を惜しまず、国家統一を守る」と猛反発した。ちなみに、米国の軍用機が、このような形で議員団を運んだのは、「中華民国」(台湾)と断交後初めてのことだという。

 台湾では、コロナ感染対策は今年の4月頃まで、きわめて効率よく行われてきたが、それは主として初期の段階において、中国大陸との人的交流を遮断するという厳格な水際対策の成果であり、世界の「模範」ともいうべき実績を上げた。しかし、世界的な感染拡大とともに、台湾民間航空機のパイロットを中心にクラスターが発生したりして、感染が一挙に拡大し、対応するワクチンの準備が遅れてしまった。 

 中台統一を狙う中国は、ワクチンの提供を台湾側に打診したが、台湾側は中国製ワクチンの安全性などを理由にこれを拒否するという一幕もあった。中国側は、それに対する報復として、台湾が交渉中であった欧米(ビオンテック社)からのワクチン購入を背後から妨害した。そのことは、蔡英文がツィッターで明言している通りだろう。中国のワクチンを拒否する蔡英文と迅速なワクチン獲得を求める台湾国民との関係を悪化させ、台湾社会を不安定化させようという意図もあったと思われる。

 こうした背景もあり、台湾では、蔡総統をはじめとして、日本が迅速にワクチンを無償供与したことを、日台の特別の友情の証であり、「干天の慈雨」であるとして、日本の配慮を高く評価している。今回のワクチン供与にあったっては、東京駐在の謝長廷代表(大使に相当)が直接日本側との話し合いに尽力したと報道されている。また、読売新聞の報道によれば、安倍前総理が蔡英文総統の要請を受け、舞台裏で台湾へのワクチン供与に大きな役割を果たしたと伝えられる。

 なお、日本側の提供したアストラゼネカ製ワクチンは、ファイザー製やモデルナ製に比べ副反応が見られるとの報道がある。しかし、台湾では、何よりも迅速な対応を求められる状況のなかで、リスクよりはメリットの方がはるかに大きいとして日本側の提供は評価されているようだ。

 他に最近の日台関係のうち、特筆すべきことは、日米首脳会談や「2プラス2」会談の共同声明のなかに「台湾海峡の平和と安定の重要性」が特記され、「両岸問題の平和的解決を促す」との文言が入ったことである。日米首脳間の文書に台湾が明記されたのは1969年以来のことである。このような日米共通の関心表明に対し、蔡英文政権は「心からなる歓迎と感謝」を表明すると述べている。

 また、WHO(世界保健機関)やその総会(WHA)に台湾が参加することは、今回のコロナ感染への対応ぶり等から見ても、当然であり、日米やEUの国々が共通して台湾の参加を強く主張しているところである。しかし、中国の反対により実現していない。

 台湾はかねてよりTPP(環太平洋経済連携協定)に参加する意向を表明している。台湾のTPP加盟は、自由・民主の価値を共有し、インド、太平洋において無視しえない経済規模を持つ台湾の存在を考えれば関係諸国にとって当然のことと考えられる。日本としては主導的に関係諸国に働きかけ、台湾のTPP加盟を実現することが期待される。

  
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