米国駐在員からMBOそして京都で起業家の道へ
起業につながるエピソードはありますか? と聞きますと、お父さんが自営業であったことと、大学生時代演劇サークルのシナリオ、脚色、ストーリー作りをしていたことが影響していると思うと答えた大木さん。
インタビューを通じて、会社員時代の仕事の進め方、自分の仕事、その領域以外のことにも意欲的に突っ込んでいきビジネスを作る、プロデュースする体験の蓄積が企業内起業家的活動となっていったところだと感じました。
大学卒業後、美術全集、図録、高級美術印刷等の本を作る会社に興味があった大木さん、その夢を叶えるために、日本写真印刷株式会社(現:NISSHA株式会社)に2003年入社、本の編集等をやりたかったところ出版関係の部署には行けず、家電製品、通信端末のディスプレー関連の部品、デザインに関わる営業の仕事を日本にいた9年間担当していました。
そこで単に自分の領域の国内営業だけをするのではなく、サプライチェーンの担当、海外生産に関わること、ビジネスモデルを改良して新規技術を採用して事業開発をして行くようなユニークな活動をしていました。その活動が本社の目に留まり、米国行きの打診につながり駐在員としてアメリカで仕事をするようになります。
アメリカの家電メーカーとの事業開発、営業、ブラジルの拠点づくり、M&Aの実行、新規事業創出を次々と手がけていきます。有名どころにはテスラ、Johnson&Johnson新規事業をスタートさせ、アメリカにいながら世界市場を相手にする仕事をしていたそうです。大きなプロジェクトベースを4、5つを同時に進めながら、社内ベンチャーを勝手に作り始めたのが、今の事業であるmuiだったそうで、誰かに社内ベンチャーを立ち上げなさいと言われたわけでもなく自分でこれは事業になりうるという仮説、検証を始めていたところからすでに起業家という働き方になっていました。
伝え聞きで、社内ベンチャー制度がどうもあるらしいということを知り、日本からアメリカに出張中の役員に少しの時間をもらって相談、了解をもらって社内ベンチャー経営者という肩書きを手にしたものの、会社登記の方法も会社運営についてやったこともないまま、見様見真似、独学で社長業と会社員生活の両立がスタート。
法人設立はNISSHAの本社がある京都、会社設立に合わせて自身が米国から「転勤」して就任することに。転勤先が自分が作った会社へという珍しい経験を大木さん、そこから順風だったか? 社内ベンチャー社長時代を振り返って、それは「なんちゃってスタートアップ社長」だったと話します。自分が本気で口説きたい人材の採用とダイナミックを成長するためには限界を感じ、自身の会社化を早い段階で決意、役員にMBOの相談をします。
その相談をすんなり認めてもらい、かつ今後の社内独立の制度化のために大木さんをモデルケースにしたいと、このMBOを後に続く社員のためにスキーム化、ルール設定、モデル構築(ファイナンス、人事制度)をした上でのOKが出たそうです。この MBOについては大木さん自身、NISSHAに感謝しても仕切れない円満なMBOだったと言います。
ただMBOやっていいよと言われるも、やり方がわからない中、会社設立の時と同様に、いろんな出会いに助けられなんとかやり遂げ、2019年5月に自身の会社としてスタートすることに。17年10月に社内子会社設立から約1年半でMBOをしたことになります。
柱のキズをデジタル化し、 家族の思い出をデジタルアーカイブ
このプロジェクトに関しては動画をまずご覧ください。動画はこちらです。
スマートホームでデジタルペンを活かすこと。そのテーマへの具現化がこちらのプロジェクト。柱のキズという世界各地でも子供の成長記録を残す習慣をデジタル化。利用価値体験を高めるコンセプトモデル構築と商品化を行なっています。販路についても協業していく予定だそうです。
木を基調として店舗内で溶け込む
店舗におけるレジ周りはそのお店でのコミュニケーションの場であり大切な体験を生み出す場所、そこが雑然としていたところをmuiを導入することでスッキリ。
利用している、中川政七商店のスタッフの声から、「元々は店側のメッセージをお伝えする目的で導入しましたが、 特に若いお客様が自然とmuiにタッチし、想定外の双方向コミュニケーションがうまれています。 今後はよりインタラクティブな活用方法を考えていきたいと思っています」と新たな利用方法への発展も見出し始めています。
百貨店との連携
大丸京都店にて、従来型のモノを売る商業空間としての百貨店から、情報・文化・人とのつながりを醸成する場としての役割、モノの背景にある物語を売るユーザー体験のかたちを「サードプレイス by mui Lab」として提案しました。
具体的には、百貨店という商業空間において「余白」をデザインすることで、来場者の方々が、過剰な情報によって注意や関心を削がれるのではなく、精神的ゆとりを持ってアート作品の背景や作り手、作品が纏う空気感を楽しめるようなくつろぎの空間を演出したそうです。
大木さんは、「SonyのWalkmanのように世界中でmuiと言う言葉や概念がカーム・テクノロジーのライフスタイルとして根付くようにビジネスが広がっていく姿を作っていきたい」と考えているそうです。
これからの同社の動きに注目していきたいと思います。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。