2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2021年8月20日

米軍撤退後の「新中東秩序」を
日本は目ざとく読み解け

 アフガニスタンからの米軍撤退後も、今年20年目の節目を迎える「対テロ戦争」は形を変えて続く。実際のところ、中東からの米軍撤退は構造的な変容の中で起きているものであり、もしもこうした状況下の条理を「新中東秩序」と呼ぶのであれば、米国は航空機による遠隔テロ監視や通信傍受・人的諜報などを用いた新しい形態での関与を求められる。

 既に「力の真空」は、米国以外のパワーの台頭を促している。麻薬・テロ対策を念頭に、中ロはアフガニスタン安定化に積極的に関与している。両国とも米国のようにアフガニスタンに地上軍を派遣することはないと考えられるが、米国が抜けた間隙を突き影響力拡大を図るだろう。加えて、今後は、サウジアラビア、イラン、トルコ、カタール、パキスタンなど地域諸国が中心的な役割を果たすものと考えられる。特に、和平協議のホストであるカタールはタリバンに対して梃子を有し、タリバンと良好な関係を有するパキスタンの域内での影響力は拡大するだろう。カブール国際空港の警備に名乗りをあげたトルコも、主要プレーヤーの一つに躍り出た格好だ。

 80年の「カーター・ドクトリン」(カーター米大統領〈当時〉による外交政策の総称)は、冷戦構造下でソ連がアフガニスタン侵攻したことを誘因として、中東に埋蔵される石油とそのシーレーン(海上交通路)の防衛を優先課題に設定し、中東を米国の核心的利益と位置づけた。米国の対中東政策は、アフガニスタンから大きな影響を受ける歴史を繰り返している。中東に戦略的利益を有する日本は、過去20年間にアフガニスタンで行ってきたことの評価をした上で、域内での力学の変化を目ざとく読み解き、アフガニスタンの安定化に貢献していかなければならない。

 

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Wedge 2021年9月号より
真珠湾攻撃から80年
真珠湾攻撃から80年

80年前の1941年、日本は太平洋戦争へと突入した。
当時の軍部の意思決定、情報や兵站を軽視する姿勢、メディアが果たした役割を紐解くと、令和の日本と二重写しになる。
国家の〝漂流〟が続く今だからこそ昭和史から学び、日本の明日を拓くときだ。


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